本研究の目的は「αMnの圧力-温度相図の解明」である。2022年度に常圧の反強磁性相における核磁気共鳴(NMR)を行い、1970年代に中性子散乱実験で提案されているスピン構造が間違っていることを発見した。αMnは結晶学的に4つのサイトI-IVから成るが、AFM相ではそれぞれ磁気的に1(I)、2(II)、4(III)、4(IV)に分裂することが明らかになった。(島根大学との共同研究)この試料を用いて中性子散乱実験を行ったが、NMRの結果とコンシステントなスピン構造モデルが不明であり、スピン構造の決定には至っていない。(原子力機構との共同研究)本年度、NMR信号の温度変化の実験から、10K以下で逐次転移が起きている結果が得られ、現在その詳細を実験中である。今後、これに対応した10K以上での中性子散乱実験を行うことによりスピン構造を解明する。 一方、高圧下で誘起される弱い強磁性(WFM)相での中性子散乱実験では、磁気秩序により単位胞は変化しないことが明らかになっており、4つのサイトから成るフェリ磁性と結論された。(論文投稿中)高圧下NMR測定により、4つのサイトそれぞれについて、磁気モーメントの大きさの圧力依存性が明らかになった。(千葉大との共同研究)WFM相が消失する臨界圧力近傍で、磁気モーメントの不連続な変化が観測され、一次転移であることが明らかになった。電気抵抗測定ではT^(5/3)に比例する磁気ゆらぎ効果が観測されており、弱い一次転移であると結論される。
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