研究課題/領域番号 |
21H01043
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
石松 直樹 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 特定准教授 (70343291)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 磁気体積効果 / Fe合金 / 広域X線吸収微細構(EXAFS) / 逆モンテカルロ法 / Fe-Fe相関 |
研究実績の概要 |
これまで磁気体積効果と弾性特性の関係は異種の金属原子が不規則に配列する歪んだ合金は構造モデル化が難しく,構造や磁性を平均化することでしか説明できなかった.本研究では広域X線吸収微細構(EXAFS)等,検出可能な構造スケールの異なる放射光実験を駆使してFe合金の磁気体積効果と弾性特性の起源解明を目指した.R4年度はFeを希釈したFe-Ni合金についてEXAFSとXMCDを圧力下で測定し,強磁性相の安定性とFe-Fe原子対の伸長/収縮との相関を調べた.これまでの成果と同様にFe濃度が小さい試料についても強磁性相でFe-Fe間の伸長が見られた.また圧力下で強磁性相が安定であることと相関して,Fe-Fe間の伸長も維持されることが分かった.また負の熱膨張を示す不規則Fe-Pt合金についてX線全散乱およびEXAFS測定を行った.EXAFSの短距離,全散乱の中距離の構造情報を合わせたより実際に近い合金構造の導出するため解析を継続している.R4年度はFe-Ni合金の成果について指導学生がXAFS討論会で講演し,その講演に対して学生奨励賞が授与された.またこの成果の一部をFront. Mater. に論文投稿し受理された.またR4年度末にアップグレードを終えた欧州放射光施設に渡仏し,高圧下でのEXAFS測定の予備実験を行った.国内にはない合金の精密構造解析に適した実験設備が整備されていることが分かり,現地研究者と今後の議論を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R4年度ではSPring-8でのX線回折実験,X線吸収実験の圧力下測定を行い,さらにESRFでの実験も行い順調にデータを取得している.また圧力媒体を静水圧性の高いヘリウムに変えたEXAFS実験にも成功し,高い精度の測定も行っている.研究計画に記述したX線全散乱測定(PDF)測定にも着手できた.Fe-Ni合金構造に関する論文の出版が1件ある.このため概ね計画通りに進んでいると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
放射光実験の継続と成果発信に努めると同時に,研究室での物性測定と試料作製を進める.特にFe-Ni合金の全散乱測定についてはFeとNiの区別が難しいため中性子の全散乱測定を計画する.また逆モンテカルロシミュレーションから得られた3次元合金構造の圧力変化や組成依存性について,定量的かつ視覚的な解析手法の開発も継続して進める.以上のように,多角的な実験と解析から磁気体積効果の起源に原子レベルから迫り,論文化と成果発信に努める.
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