研究課題
本研究では、実験家と理論家が協働して、スピン正20面体の磁気秩序・磁気構造・磁性制御法を明らかにすること、それに基づき、スピン正20面体特有の新物性や新現象を開拓・実現することを目的としている。実験では、マクロ磁化測定および中性子回折実験により、典型的な非ハイゼンベルグ系近似結晶Au-Ga-Tb近似結晶の強磁性相、反強磁性相の磁気構造を決定し、また、平均価電子数－磁気相図の完全解明に成功し、論文発表を行った。この磁気相図は、今後非ハイゼンベルグ系準結晶の磁気構造を解明する上での学術的基盤を与えるものである。以上の研究を通じて、正20面体の対称性を直接に反映した、渦巻き強磁性秩序、渦巻き反強磁性秩序の存在が解明され、その特異な非共面磁気構造を用いた新たな物性研究への道を切り拓いた。理論面では、Gd系やCe系の20面体近似結晶の磁気秩序を明らかにするため、実験との比較が可能な磁化過程や比熱などを、クラスター・ネール反強磁性相、キューボック反強磁性相、並行対反強磁性相の各相で、数値シミュレーションを行いその違いを調べた。その結果、磁化過程には、スピンフロップやカスプ異常などの定性的な違いが見られ、比熱にはピーク位置や低温の振る舞いに定量的な違いが見られた。今後、実験と理論の詳細な比較により、Gd系やCe系の磁気秩序の同定を行う予定である。また、これら20面体近似結晶の磁気秩序の発現機構について、クラスター描像に基づいて理論的に再考し、その直観的描像を確立して論文発表を行うことにより、スピン20面体物質の学術的基盤を創出した。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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