研究課題/領域番号 |
21H01046
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
齋藤 一弥 筑波大学, 数理物質系, 教授 (30195979)
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研究分担者 |
山村 泰久 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (80303337)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ジャイロイド / 液晶 / 古典スピンモデル |
研究実績の概要 |
ジャイロイド相および関連するキュービック相の構造解析:温度変化型液晶におけるジャイロイド構造形成のメカニズムを解明するために,分子構造に変化を加えた物質についての異なる温度における構造解析を実施し,分子凝集構造の変化を解明した.結果の一部については論文として公表した.ジャイロイド相に隣接するキラルなキュービック相の構造について長く興味が持たれていたが,構造解析の方法が見つからずにいた.こうした相では分子運動が激しく,構造の乱れも大きいが,こうした事実を積極的に利用した構造解析法が最近,提案された.そこで,提案者と協力して,この方法を拡張することによるキラル相の構造解析の試みを開始した(2022年度に結果を公表).
層状液晶相における分子充填様式の解明:層に対し分子長軸が垂直な直交スメクチック液晶について,層間隔の鎖長依存性から推測された層秩序度の高低を,X線回折の結果から定量的に示す方法をほぼ確立し,結果のとりまとめに取りかかった.直交スメクチック液晶についての解析方法についてめどが立ったので,斜交スメクチック液晶についての実験を開始し,解析法の検討と構造モデルを模索している.故障した断熱型熱量計はほぼ修理が済み,二つの液晶性物質の測定を実施した.
平行・反平行配列を好まないスピンモデルの挙動:温度変化型液晶におけるジャイロイド相では,分子方向が連続的に回転していることがわかっているので,隣接スピンがねじれた配列を好む古典スピンモデルの挙動を調べている.3次元(立方格子)での挙動は既知であった.本年度は2次元三角格子上のモデルを計算機シミュレーションにより詳細に検討し,二次元系における古典スピンモデルでありながら相転移を起こすこと,しかし,形成される秩序が短距離秩序であることを明らかにした.この結果を公表するとともに,外場を印可した場合の様子を調べた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ジャイロイド相そのものの構造解析は対象物質のバラエティーを含めて順調に推移している.今後,さらに数報の論文としてまとめることができる予定である.また,ジャイロイド相に隣接するキラルなキュービック相の構造解析が実施できるので,ジャイロイド相の形成について新たな知見が得られる. 層状液晶相における分子凝集構造についてもとりまとめの段階にあり,今後,そうした構造的知見を踏まえた新しい現象の発見に取りかかることができる. スピンモデルについては,配向(ネマチック)秩序とねじれ配列による秩序形成が分離して起き得ることが確立できた.
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今後の研究の推進方策 |
ジャイロイド相に隣接するキラルなキュービック相は温度変化型液晶に固有なので,その凝集構造とジャイロイド相のそれを注意深く比較すれば,ポリマーなどとは異なるジャイロイド構造形成を促す因子が浮かび上がる可能性がある.当初の計画通り斜交スメクチックの構造を通したジャイロイド構造形成のメカニズムの検討に加え,そこにも注目したい.
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