棒状分子のつくるキュービック相の基本構造:ジャイロイド相に隣接するキラルキュービック相の基本構造とジャイロイド相の基本構造を既述するジャングルジム構造が,分子の捩れ配列と整合的なだけで無く,局所構造の歪みが小さく,かつ,空間充填に必要な一様性を兼ね備えていること踏まえ,その意味を考察した.分子がエントロピー効果により実質的に逆紡錘形になっていることを考慮すると,ジャングルジム上の連続的かつスムースな平均配向の変化は,円滑な分子拡散を保証していると見なすことができる.つまり,運動によるエントロピーのために最適化された凝集構造と考えることができる.この状況は,剛体球の結晶化(アルダー転移)と類似の状況と考えることができる.(一部発表済) 層状液晶相の分子凝集構造:複数の棒状分子のつくる層状液晶相について実験を実施した.X線回折によって得られた分子凝集構造と,熱容量測定によって決定したエントロピーの関係を検討した.エントロピーの差が分子凝集構造(層構造の完全さ)にもとづいて定量的に記述できることを明らかにした.これは,昨年の成果である,凝集構造と相転移次数の関係をさらに詳細なレベルで明らかにした結果である.(出版予定) ねじれを好むスピンモデル:三角格子上で起きる相転移が長距離周期を持たないことに注目し,3次元の正八面体および4次元の正二十四胞体の頂点にスピンを配置したクラスターの挙動を調べ,温度に依存して実質的な対称性の変化が起きることを示した(出版済).一方で,三角格子について想定される平均場挙動を明らかにするために,三角格子の高次元アナログとして正二十四胞体ハニカム(4次元空間充填)を同定し,その上での挙動をモンテカルロシミュレーションにより調べた.その結果,三角格子の結果から想定された3相で無く,4相が存在することが明らかになった.(出版済).
|