研究課題/領域番号 |
21H01051
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
藤井 修治 東洋大学, 食環境科学部, 教授 (40401781)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 細胞核 / バイオプローブ / 秩序構造 |
研究実績の概要 |
目的はバイオプローブを用いて細胞核内部のダイナミクスを調べることである。特に、静止場と応力場におけるバイオプローブのダイナミクスを基に、変形が与える核内ダイナミクスへの寄与を明らかにする。 バイオプローブ(FtH)を細胞核内に発現した細胞(HeLa)にプローブの自己会合体形成を促進させる酸化剤(2,3’-Dipyridyldisulfide )を加えてタンパク質自己会合体形成を促進させ、形成された自己会合体の拡散挙動を解析した。自己会合体は100nm程度の大きさである。平均自乗変位の時間依存性より、そのべき乗則の指数が3つの時間領域に分類できることを確認した。また当初の計画にはなかったが、細胞核内部で光誘起型の液-液相分離を示すRNA結合タンパク質(FUS)の拡散ダイナミクス解析を実施した。水銀ランプを光源とする蛍光顕微鏡上でフィルターを介して青色光を細胞に照射し、液液相分離によりFUSの球状ドメインが形成されたところで、球状ドメインの拡散挙動を解析した。球状ドメインは数マイクロメートルまで成長し、時間経過とともにオストワルドライプニングによりさらに合体・成長する。そのため限られた時間帯ではあるが、sub-diffusionを示すことを確認した。ただしドメインサイズが大きいためか、平均自乗変位のべき乗則の指数のクロスオーバーは見られなかった。核内ダイナミクスを検出するためのバイオプローブとしては前者の方が適切である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1年目の遅れを引きずっていることが遅れの原因であるが、それに加え、2年目では画像取得ソフトMataMorphの販売停止に伴う購入ソフトの再選定でも時間を要した。当初計画ではMetaMorphを使用して対物レンズのピエゾ制御を行う予定であった。そのため6月時点からメーカーと打ち合わせを重ねソフトとピエゾ&ドライバーの動作確認をすることにより数ヶ月に渡って購入の準備を進めていたが、急遽販売停止の連絡を受け機器選定を全て白紙状態から行うこととなり、大幅にソフトウェアの導入が遅れたことも遅れの原因となった。 一方、牽引力顕微鏡を作成したことにより、従来の予定にはなかった細胞の牽引力計測と核内部のダイナミクスとの比較が可能になったことは進展の一つである。今後、ゲルに閉じ込めた細胞に応力を加え、外的応力により細胞自身がどの程度の力を発生させ基板に留まるのか検討することが可能になった。また、その際、細胞が作り出す力と細胞核の変形との因果関係を調べることができる。
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今後の研究の推進方策 |
外力下における細胞核の変形と核内バイオプローブの拡散挙動を調べる。コラーゲンゲル中に細胞(HeLa)を閉じ込め、ゲルを変形させることにより細胞に応力を加え歪ませる。この際の細胞核の変形と核内部の核小体やバイオプローブの拡散挙動を顕微観察し、外力が核内ダイナミクスに及ぼす影響を調べる。 加えて、牽引力顕微鏡を利用し、外力下において細胞が作り出す牽引力を計測する。この時、細胞核まわりにおける牽引力に注目し、細胞自身の牽引力が細胞核の変形に与える影響を調べ、細胞変形と核の変形との関係を明らかにする。これにより細胞変形・核の変形・核内ダイナミクスの階層的なダイナミクスを調べる。 同様の実験を、ATP枯渇系でも実施する。
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