研究課題
磁場閉じ込め核融合炉の開発では、今後ITERやDEMOをはじめとする強磁場・大電力加熱の実験が中心となり電磁場を利用したプラズマ診断の重要性が高まると考えられる。電磁場を利用した診断は分光ではシュタルク・ゼーマン効果による輝線の波長分裂を用いて行われるが、標準的な可視分光の場合これらの分裂は線幅(ドップラー広がりと分光器装置幅)に隠されてしまい精密計測が難しい。そこで本研究ではシュタルク・ゼーマン効果とドップラー効果、装置幅の波長依存性の違いに着目し(前者は2乗、後者は1乗以下に比例)近赤外分光を使ってシュタルク・ゼーマン効果を高感度で計測する。また、この結果得られる精密な電磁場情報を利用することで2種類のプラズマ診断を実現する。【課題1】「ゼーマン効果の高感度計測による原子輝線スペクトル空間分解法」:分光計測される原子輝線スペクトルが視線上の発光位置ごとに異なる大きさのゼーマン効果を受けることを利用し、視線積分スペクトルを局所スペクトルへ分解する手法を開発する。【課題2】「ACシュタルク効果の高感度計測によるマイクロ波電場ベクトル診断法」:ジャイロトロンから放射されるコヒーレントマイクロ波中でドレスト状態となった水素原子の輝線スペクトルを分光計測し、スペクトル中心・サブピークの形状解析からマイクロ波電場を求める。2021年度は【課題1】を実施した。(1) 近赤外分光システムを開発した。超伝導コイル内に設置したグロー放電管を用いて最大3 Tの磁場下での水素、ヘリウム原子輝線スペクトルを計測し、ゼーマン効果によるスペクトル形状変化を観測できることを確認した。(2) ヘリオトロンJ装置を用いて実験を行った。#10.5Oポートに視線を設置し、重水素およびヘリウム原子輝線スペクトルを計測した。後者については計算値と実験値を比較しスペクトル空間分布を推定した。
1: 当初の計画以上に進展している
研究計画で2021年度に予定していた下記(1)-(3)の課題を完了し、さらに2022年度以降に予定していた(4)、(5)の課題も実施したため。(1)高スループット・高波長分解の近赤外分光システム開発、(2)超伝導コイル内に設置したグロー放電管を用いた分光システムの動作検証、(3)近赤外分光システムのヘリオトロンJ装置への移設、(4)ヘリオトロンJ装置での重水素、ヘリウム原子輝線スペクトルの計測、(5)ゼーマン効果を利用した輝線スペクトルの空間分解(ヘリウム原子23S-23P輝線のみ)。
2022年度は当初研究計画に沿って【課題2】を実施し、並行して【課題1】の解析を継続する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
プラズマ・核融合学会誌
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Nuclear Materials and Energy
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http://oel.me.kyoto-u.ac.jp/