研究実績の概要 |
水素プラズマ流中にダイポール磁場を形成すると,正負イオンのみから構成される水素イオン性プラズマが,磁場に保護されて安定して維持されるのかを明らかにしようとしている.直径6 cmのアルミニウム製または銅製の球電極を,水素プラズマ流中に設置した.Alは負イオンが生成される金属材料で,Cuは負イオンが生成されにくい金属材料である.ダイポール磁場を形成するためSmCo永久磁石を埋め込んだ場合と,磁石を埋め込まない無磁場の場合を比較した.ダイポール磁場が形成されている場合に,負イオン生成の有無を比較することによって,負イオンは極域から夜側へ放出されている様子が明らかになった.ダイポール磁場が無い場合にはプラズマ分布は単調で,球電極の夜側のみプラズマに変化が見られる.負イオン生成される場合には,夜側からなだらかなプラズマ広がりがあり,負イオン生成が無い場合には夜側とイオン流がある領域との境界は,光の影のように明瞭である.ダイポール磁場の有無はもちろんのこと,負イオン生成の有無がプラズマ分布へ明確に影響を及ぼすことが明らかになった. H-とH+から構成される水素ペアイオンプラズマを実現するために,Alを用いたH-の生成機構の解明を行ってきた.水素化アルミだと予想される複数種の分子正負イオンが電場印加等によって崩壊して,H-またはH+が生成されることが明らかになった.分子正イオンが崩壊してH-が生成されるという,通常では考えられないイオン生成プロセスが含まれている.ここで,H-およびH+のみを生成することはできないので,水素ペアイオンプラズマを実現するためには,分子イオン等を排除することが必要である.四重極フィルターを用いてH+, H3+, Ar+それぞれ分離できることは確認した.H-とH+のみ,プラズマとして通過できることを今後確認する必要がある.
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