研究課題/領域番号 |
21H01065
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松浦 秀明 九州大学, 工学研究院, 准教授 (50238961)
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研究分担者 |
片山 一成 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (90380708)
大塚 哲平 近畿大学, 理工学部, 教授 (80315118)
後藤 実 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 高速炉・新型炉研究開発部門 炉設計部, マネージャー (60414546)
中川 繁昭 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 高速炉・新型炉研究開発部門 大洗研究所 高温ガス炉研究開発センター, 研究主幹 (40414544)
濱本 真平 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 高速炉・新型炉研究開発部門 大洗研究所 高温ガス炉研究開発センター, 研究副主幹 (90435610)
石塚 悦男 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 高速炉・新型炉研究開発部門 大洗研究所 高温ガス炉研究開発センター, 再雇用職員 (70355006)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | トリチウム / リチウム装荷用ロッド / ジルコニウム / ニッケル被覆 / アルミナ容器 / 核融合原型炉 / 高温ガス炉 / HTTR |
研究実績の概要 |
核融合原型炉を想定した初期保有及び炉工学試験用トリチウム(T)調達法として高温ガス炉を用いたT製造法を検討している.今後のHTTRを用いたT製造実証試験を想定し,その準備のため,試験体,試験法,試験後T計測法を明確にすることを目的に下記(1)~(4)を実施した. (1)HTTR照射試験時におけるトリチウム循環量の評価:HTTRにリチウム化合物を装荷して中性子照射によりトリチウムを製造するHTTR照射試験時におけるトリチウム循環量を評価し,照射試験運転時の被ばく線量を求めた.施設周辺の公衆の実効線量目標値(50 マイクロシーベルト)以下に抑えられ,被ばくの観点からの安全性に問題がないことを確認した. (2) 照射後試料のトリチウム測定法の検討:昨年度作製したトリチウム測定装置を用いて,京大炉で中性子照射したLiAlO2を試料としたトリチウム加熱放出実験を行い,放出化学形比率や放出ピーク温度を明らかにした.また,酸溶解法によるトリチウム分析手法や,照射キャプセル開放時に放出されうるトリチウムの計測手法についても検討を進めた. (3)照射試験体の製作及び試験内容の検討:照射試験体を試作した.Ni被覆Zr球の水素吸収性能に対するデータを取得し,データに基づいて,照射試験時におけるアルミナ容器内部及び外部に装荷したNi被覆Zr球のトリチウム吸収量を推定した.これらの結果から,いくつかの試験法を提示した. (4)サーメット型水素吸蔵試験体の検討:テーブルプレス(三庄インダストリー:TB-50H)および両軸成形金型を用いて,ジルコニウム粉末とリチウム酸化物粉末とを原子比を調整して混合したφ12 mm×3 mmのグリーンペレットを作製した.真空中1173 Kで20時間加熱することにより,焼結体を作製することに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は(1)HTTR照射試験時におけるトリチウム循環量の評価,(2)照射後試料トリチウム測定法の検討,(3)照射試験体の製作及び試験内容の検討,(4)サーメット型水素吸蔵試験体の検討の各項目を実施計画として掲げ,それぞれの担当者が目標を立てて研究に取り組んだ.上述の通り,どの課題についても概ね当初予定した検討を実施して有益なデータを得ている.現時点で特に大きな問題は存在せず,当初の目的に沿って進展していると考えられるため,おおむね順調に進展しているものと判断した.
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今後の研究の推進方策 |
将来,HTTRを用いた照射試験を実施することを想定し,代表・分担・協力研究者が,そのためのそれぞれの課題に対して,引き続き現在の検討を押し進める. 特にNi被覆Zr球の水素吸収性能については,これまで3日間程度の酸化物との高温共存期間に対して,その性能測定を行ってきた.令和4年度までの実験では,良好な水素吸収性能が得られているが,球体積が小さい場合は,NiのZr粒子内部への拡散侵入の可能性が分担研究者によるTi球を用いた実験において指摘されている.Zr球はTi球の数千~1万倍の体積としているが,できるだけ長期間の酸化物との高温共存期間に対して確認が必要である.本年度は,(1)長期間の酸化物との高温共存状態を想定して,その性能把握試験を実施する.又,(2) 照射試験前後の温度変化についても,試験結果への影響を検討する.これらと並行して,(3) 照射試験体解体時に放出されるトリチウムを高効率に捕集・定量するための分析システムを構築するとともに,各種材料中に滞留するトリチウム測定手法の高度化を図る. HTTRは,令和3年7月に運転再開したが,その後,1次ヘリウム循環機のフィルタの差圧が上昇傾向にあることが確認され,フィルタ交換等の保全作業が必要となったため,令和4年1月以降,現在に至るまで運転ができない状態にある.将来的なHTTRにおける照射試験の時期が想定より遅れる可能性があり,当面,将来のHTTRを用いた照射試験の前段階として,研究炉等を用いた照射試験を実施し,可能な部分を前倒しで確認することも視野に入れる予定である.(4) これらの事前試験を想定した試験方法についても検討を進め,将来のHTTRを用いた実証試験につなげていく予定である.
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