研究課題/領域番号 |
21H01071
|
研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
金 宰煥 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 六ヶ所研究所 ブランケット研究開発部, 主幹研究員 (80613611)
|
研究分担者 |
中道 勝 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 六ヶ所研究所 ブランケット研究開発部, グループリーダー (60343927)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | Li2TiO3 / Be12Ti / リサイクル / マイクロ波加熱 |
研究実績の概要 |
核融合炉の機能材料であるリチウム(Li)およびベリリウム(Be)は、4年の運転期間であっても、大量に残存するため、これらの機能材料のリサイクル技術開発は核融合の早期実現に不可欠な課題である。 本年度では、核融合炉内の機能材料である、Li2TiO3及びBe12Tiのリサイクル技術開発を実施した。先ず、Li2TiO3微小球を原料としたリサイクル技術開発に成功した。酸溶液とマイクロ波加熱を使用した溶解処理工程により、Li2TiO3を溶解し、沈殿分離を行い、固体としてTiO2を分離した。その後、LiCl溶液をLi2CO3に炭酸化するために、重曹(NaHCO3)を添加し、撹拌、蒸発、洗浄、ろ過を2回繰り返すことによって、Li2TiO3から原料であるLi2CO3を86%回収することに成功した。また、リサイクルのプロセス開発だけではなく、Li2TiO3微小球の酸溶液とマイクロ波加熱における溶解挙動の反応速度について調査し、この反応が表面化学反応による溶解反応であることを明らかにした。 同様に、Be12Tiのリサイクル技術開発の一環として、Li2TiO3と同様な条件でBe12Tiの溶解試験を実施した。Be12Tiは、塩酸溶液とマイクロ波加熱で溶解処理し、TiO2の沈殿分離を実施した。その結果、Beは全溶解したが、Tiは(Ti3+、Ti4+として)僅かな量(約4%)残存することが分かった。 また、タングステン(W)中の不純物分離・除去試験として、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、レ二ウム(Re)、オスミウム(Os)などを添加した上で、塩酸溶液とマイクロ波加熱による溶解処理を行い、各々の元素の分離試験を実施中である。現在執行錯誤の真っ最中であるが、分離傾向が分かりつつあるため、R5年度にはその成果を明確にすることができる見通しである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度では、増殖機能材料であるLi2TiO3(6Li90%)およびBe12Tiのリサイクル技術開発に重点を置いて取組んでいる。これらの機能材料は戦略物質であり、原料価格が非常に高いため、これらの材料のコストを適正化するためには、リサイクル技術の開発は不可欠である。 Li2TiO3のリサイクル技術においては、学術的なアプローチをとり、溶解挙動や反応速度等を解明してきた。また、Li2TiO3から原料であるLi2CO3を回収できる一連のリサイクルプロセス開発に成功した。 また、Be12Tiのリサイクル技術開発においても、Be12Ti中のBeを完全に除去することに成功しているが、Tiは僅かな量が残存している。そのため、完全な除去技術の開発に取り組んでいる。 更に、運転後に想定される放射性物質の分離除去技術に関しては、タングステン(W)中から生成されうる、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、レ二ウム(Re)、オスミウム(Os)が検討されており、現在は溶媒抽出法を用いて検証実験を実施している。但し、100%の分離除去はまだ、達成できておらず、引き続き、試行錯誤を行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては、R4年で未解決課題であるBe12Ti中のTiの完全分離除去技術に取り組む予定である。Be12Tiの溶解液中のTi2+はTiO2に沈殿されるが、Ti3+およびTi4+は残存することが予想されるため、酸溶液とマイクロ波加熱の溶解処理において、Ti3+とTi4+をTi2+に変換する方法として、塩酸溶液に小量の過酸化水素(H2O2)を添加することを検討している。これによって、Ti2+に変換し、TiO2としての沈殿分離を進める予定である。 また、運転後に想定される放射性物質の分離除去技術については、タングステン(W)中のタンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、レ二ウム(Re)、オスミウム(Os)が想定される。これらの分離には、溶媒抽出法、吸着分離法、または、両方の方法を組み合わせた混合法を適用し、溶解液中の不純物を100%分離除去する試験を実施する予定である。
|