研究課題/領域番号 |
21H01076
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
内田 儀一郎 名城大学, 理工学部, 教授 (90422435)
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研究分担者 |
茂田 正哉 東北大学, 工学研究科, 教授 (30431521)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ナノ粒子プラズマプロセス / 反応流れ場 / ナノ複合材料 / Liイオン電池 / ゲルマニウム |
研究実績の概要 |
本研究では低温プラズマ反応性流れ場をナノ材料プロセスに展開し、ガス流速を実験パラメータとして、ナノ粒子生成・配列現象を系統的に解析する。本年度は、ガス圧力の高いTorrレンジまでのプラズマスパッタリングプロセスにおいて、材料原子の供給源となるスパッタカソード電極の後方から成膜基板方向に向かって放電ガスを供給し、プラズマ反応空間にガス流れを形成する実験系を構築した。1つのスパッタプラズマ源からなる低温プラズマ反応性流れ場実験系で、ガス圧力0.1~1 Torr、ガス流量10~1,600 sccmの高範囲の実験パラメータで実験を行った。その結果、速いガス流れを持つ約1,000 sccm以上の高ガス流量下で、プラズマの発光強度が大きく低減し、放電形態が変化した。下流で作製されるGeナノ粒子膜の粒径に関して、500 sccm程度まではガス流量にほぼ比例して増大し、40~100 nmの範囲で変化した。一方、500 sccm以上の高ガス流量下で粒径は減少し、10 nm程度のナノ粒子膜が形成された。また、作製されたGeナノ粒子膜の結晶性に関して、成膜基板の加熱が無い本実験系において基本的にはアモルファス構造を示した。しかしながら、スパッタカソード電極と成膜基板間の距離を極短の5 mmに設定したところ結晶構造へと変化した。膜全体の多孔度に関して、放電ガスにArを用いた場合の約17%に対し、Heを用いた場合は約30%と大きく上昇し、よりポーラスな構造が形成された。本年度、低温プラズマ反応性流れ場を用いたナノ粒子膜作製プロセスにおいて、ガス流量によりナノ粒子の粒径が、スパッタカソード電極/成膜基板間距離により結晶構造が、また、放電ガス種により多孔度がそれぞれ制御可能であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低温プラズマ反応性流れ場に関して、材料原子の供給源となるスパッタカソード電極の後方から成膜基板方向に向かって放電ガスを供給し、プラズマ反応空間にガス流れを形成する実験系を構築した。その実験系を用いて、ガス流量10~1,600 sccm、ガス圧力0.1~1 Torrの高範囲の実験パラメータで予定通り実験を遂行した。その結果、ガス流量、スパッタカソード電極/基板間距離、放電ガス種により、Geナノ粒子膜の粒径、結晶構造、多孔度がそれぞれ制御可能であることを新たに見出した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は、1つのスパッタプラズマ源からなる低温プラズマ反応性流れ場を用いて、ガス圧力0.1~1 Torr、ガス流量10~1,600 sccmの高範囲の実験パラメータで実験を行った。本年度は、2つのスパッタプラズマ源を設置した、2つのプラズマ反応性流れ場をもつ実験系を新たに構築し、2元系ナノ材料プロセスに関する実験を行う。気相領域に関して、放電プラズマ中ナノ粒子のレーザー散乱光を計測することにより、放電空間のガス流形態を評価する。放電ガス流量をパラメータに、ガス流れの層流や乱流などの形態を制御する。下流で作製される2元系ナノ材料膜に関して、ナノ構造と物性をSEM、AFM、TEM、XRD、ラマン分光を用いて解析する。膜中ナノ粒子に関して、合金・コアシェルなどの微細構造、ナノ粒子の凝集や分散度合い、膜全体の多孔度を評価する。さらに、この2元系ナノ材料膜をLiイオン電池へと応用展開し、これを負極とするLiイオン電池を実際に試作し、電池容量の充放電サイクル特性を評価する。
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