本研究では低温プラズマ反応性流れ場をナノ材料プロセスに展開し、ガス流速を実験パラメータとして、ナノ粒子生成・配列現象を系統的に解析する。最終年度の本年度は、ナノ粒子膜とLiイオン電池容量との関係を解析し、その結果、高容量で劣化のないナノ構造負極膜をプラズマプロセスで実現した。Geナノ粒子膜は比較的圧力の高い0.5 Torrの高圧プラズマスパッタリング法で作製した。平均粒径20 nm程度のアモルファスGeナノ粒子で構成された多孔度19%のナノポーラス膜となった。この多孔質Geナノ粒子膜を負極とするLiイオン電池を試作し評価したところ、初期容量は864 mAh/gと従来のグラファイト負極の2倍程度と高いものの、90サイクル充放電後の容量は309 mAh/gと大きく低下した。そこで多孔質Geナノ粒子膜をカーボン層で挟む多層構造を新たに考案した。具体的には集電体となる銅電極の上にカーボン層を形成し、Ge層、カーボン層と順次、高圧スパッタリング法で堆積した。カーボン膜は平均粒径13 nmのナノ粒子で構成され、ラマン分光計測よりアモルファス構造であった。このC/Ge/C多層構造負極のLiイオン電池において劣化は大きく抑制され、初期容量976 mAh/gに対し、90サイクル充放電後の容量は910 mAh/gと高容量を維持した。本研究によりGe層の両側のカーボン層が銅集電体とGe、電解液とGeのそれぞれの界面になり、多孔質Geナノ粒子膜の機械的劣化と化学的劣化を抑制できることが明らかになった。本研究で開発した高圧プラズマスパッタリング法で一貫して作製したカーボン/Geナノ粒子負極膜で、劣化のないLiイオン電池の駆動を実証した。
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