研究課題/領域番号 |
21H01102
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
青木 和也 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (70525328)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | カイラル対称性 / ベクトル中間子 / 質量 |
研究実績の概要 |
J-PARC E16実験の最内層飛跡検出器として、新型シリコン検出器(SSD)を開発している。SSD動作のためには遮光・静電遮蔽・フロントエンド回路の冷却が必要なため、それらを可能にするテストチェンバーを製作し、組み立を行った。実験室における動作試験を行ったあと、プロトタイプに東北大学電子光理学研究センターの陽電子ビームを照射し、性能評価を行った。データ読み出しはFPGA搭載のデータ収集ボードを用いたが、ビーム実験用には高速読み出しの実装が必要であったため新しいファームウェア開発し、動作を成功させた。試験の結果、5.6nsecという十分な時間分解能が得られた。ノイズが想定の三倍以上大きく、テスト実験では苦しめられた。しかし配線やグラウンディングのみなおし、およびノイズフィルターの導入などによって十分低く抑えることができるようになった。 E16実験への設置については、SSD10台を非常に限られたスペースにインストールしなければならない。限られたスペースでありながら遮光・冷却・静電遮蔽が必要で、かつ実験のアクセプタンス内の物質量を最小限にする必要がある。そのためのサポート設計を並行して行った。 また、E16実験でSSDの一つ外側に配置するGEMトラッカー(GTR)をSSDのアクセプタンスに合わせるように増設する。そのために100mm角および200mm角のGEMフォイルや読み出し基板などの主要部品の製造を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度はシリコン検出器SSDのプロトタイプを実験室において動作させ、ビームを用いた性能評価を行うことができた。ノイズが想定の三倍程度多くて苦しめられたが、配線のみなおし、フィルターの導入などによって十分低く抑えることができるようになった。 実機用サポートの設計については、場所が狭いことから設計が難しかったが、概念設計を完成させた後業者による詳細設計を経て、現実的な設計を完成させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
J-PARC E16実験の最内層飛跡検出器、シリコン検出器(SSD)についてはプロトタイプによる動作確認でき、サポートの設計もできたため、本年度はGSIのシリコングループと協力して実機製作を進めていく。インストールのための検出器架台については、昨年度行った設計に基づいてモックアップを用いた実証試験を経た後、製作をすすめる。ビームラインの構造上信号の延長が必要であり、延長ケーブル及び必要に応じて信号バッファの開発を行う。完成した架台にGSIにおいて製作した実機をインストールし、その後実験エリアへのインストールを行う。 一つ外側のGEMトラッカー(GTR)についてもアクセプタンスを増強するために実機製造を昨年度に引き続きすすめる。昨年度製造した読み出し基板の測長を行い、GEMフォイルの動作を確認した後、チェンバーとして組み立てて動作試験を行う。GTRについても、E16実験エリアへインストールを行う。
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