研究課題
カイラル対称性回復現象の系統的研究を遂行する為に、J-PARC E16実験の、特にトラッキング検出器の準備をすすめている。具体的には実験の最内層トラッキング検出器であるシリコン検出器を完成させて、E16実験エリアへインストールした。しかしながら予定していたコミッショニングビームタイムは、加速器の事情により10時間で終了してしまい、十分な性能評価ができなかった。そこでKEK PF-ARにおいてテスト実験を行った。その結果4.8nsecという十分な時間分解能と、99%以上という高い検出効率を得られることがわかった。しかし同時に、斜め入射に対して効率が著しく悪化し60%となってしまう事が判明した。検討の結果、信号時刻を取得するための閾値設定が高すぎた事が原因であることがわかった。ストリップ幅が58umと細いため、斜め入射だと信号が多くのストリップに分散し、信号強度が減少してしまう。一般的なシリコン検出器と異なりセルフトリガー仕様で動作させなければならない為、閾値の設定は肝要である。そこで、自由に生信号を見ることができない制約の中で。適切な閾値を設定する手法を確立した。テスト実験中に新たに発生した問題として、シリコンにバイアス電圧をかけるとLVDSデジタル通信が不安定になるという現象が現れた。これについてはLVDS伝送用の信号線が完全にフローティングであったことに着目し、それを抵抗を介してグランドに落とすことによって通信の安定性を向上させることができた。これら改善を施し、シリコン検出器を再びE16実験エリアへインストールした。また、製造したGEMトラッカーについてもE16実験エリアへインストールを完了させることができ、次年度に再び行えることが決定したコミッショニングランに備えている。その結果を実験課題審査委員会へ提出し、物理ランを勝ち取る。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2024 2023 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A: Accelerators, Spectrometers, Detectors and Associated Equipment
巻: 1058 ページ: 168817: 1~10
10.1016/j.nima.2023.168817
Journal of Instrumentation
巻: 18 ページ: C06021: 1~4
10.1088/1748-0221/18/06/C06021
Few-Body Systems
巻: 64 ページ: 63:1~13
10.1007/s00601-023-01828-7