研究課題/領域番号 |
21H01103
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
近藤 康太郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 光量子科学研究部, 主任研究員 (80582593)
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研究分担者 |
中新 信彦 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 光量子科学研究部, 主任研究員 (70615509)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 中間子 / 高強度レーザー / 光核反応 / 電子加速 / 粒子加速 |
研究実績の概要 |
パイ中間子は,発見から70年以上経った現在においても素粒子・原子核物理学にとって非常に重要な粒子である.しかし,パイ中間子や崩壊して得られるミュオンを高強度の粒子線として発生させる中間子工場は,大規模な粒子加速器施設が必要不可欠となっており,中間子を用いた研究環境は限定されていた.一方,ゲージボソン粒子である光子の集まりであるレーザーは,単位体積あたりの光子数に制限がないため,非常に高いエネルギー密度状態を作り出すことができる.チャープパルス増幅に代表されるレーザー技術の発展により,非常に高いレーザー集光強度が達成され,高強度レーザーによる電子加速実験では既にGeVを超える電子が発生している.本研究では,高強度レーザーを用いてパイ中間子を生成させるとともに,世界で初めて高強度なレーザー光場を用いてパイ中間子の加速を実証する.
今年度は,よく定義された実験環境を整えるために,放射化計測の試料となる固体標的をレーザー航跡場電子加速させる真空チェンバー内に設置できるようにし,かつ実験後速やかにその固体標的を取り出せる実験体系を構築した.その実験体系で300 MeV以上に加速された電子ビームを固体標的前方に設置したガンマ線コンバーターへ照射した.固体標的を照射実験後速やかにGe検出器を用いて放射化計測を行なったところ,Alを含む複数の固体標的に対して(γ, π+)由来等と考えられるシグナルが検出された.この実験結果は,先行研究やこれまで得られていた我々の予備的結果に比べて,高いS/N比をもつことが確認された.また中間子加速実験用光学ビームラインの再検討を行い,その構築を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
よく定義された実験環境を整えるために,放射化計測試料となる固体標的をレーザー航跡場電子加速する真空チェンバー内に設置できるようにし,かつ実験後速やかに固体標的を取り出せる実験体系を構築した.その結果,これまでの結果より高いS/N比をもつ(γ, π+)由来等と考えられるシグナルを検出した.
今後実施する中間子加速実験用の光学ビームラインの検討を進める中で今年度実施した実験結果から,当初の光学設計よりも安定に電子ビームを発生できる方法が見出され,光学ビームラインの再検討を進めた.その結果,再検討した光学ビームラインを取り入れた方がよりよい実験が実施できる見通しがたったので,大型光学部品を調達し,その光学ビームライン構築を進めた.
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今後の研究の推進方策 |
よく定義された実験体系で実施した今年度の実験では,これまで実績のない固体試料からも(γ, π+)反応起因と考えられるシグナルを計測した.今後さらなる実験結果の解析を行うとともに,実験体系を基にしたモンテカルロシミュレーションを進め,π中間子生成の定量的評価を進める.さらに中間子加速実験に向けた検出器等の構築を進めていく.
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