本年度はこれまでに確立したマイクロ波灰化装置と誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)を組み合わせた有機物中放射性不純物量測定に関して、実験環境および使用器具起源の放射性不純物量を評価し、検出下限(detection limit)の評価を行った。9個の石英製ビーカーに関し洗浄、灰化、溶液化、ICP-MSによる測定という一連の操作を行った結果、現在の測定環境では数pptの検出下限であることが分かった。この検出下限はKamLAND2-Zen実験で要求されるレベルを満たす。 また脱溶媒ネブライザとICP-MSを組み合わせ高感度化したICP-MS装置自体の検出下限についても評価を行い、検出下限はウラン238で約1 ppq、トリウム232で約8 ppqであることが分かり、研究目標に掲げたppqレベルの測定感度を達成した。今後実験器具の洗浄を行う場所や灰化装置周辺環境のクリーン化を行うことで現在の数pptの検出下限をより改善することを目指す。 昨年度までに行った発光性フィルム中の放射性不純物量測定結果、および今年度の検出下限の評価について取りまとめ国際会議でポスター発表を行った他、論文を現在投稿中である。 また発光性フィルムにおける液体シンチレータの発光の吸収再発光や透過率などの性能評価や、より添加物が少ない発光性フィルムの放射性不純物量測定なども行い、物理学会で研究成果を発表した。 有意な不純物量が確認された波長変換剤については、純化手法である波長変換剤を有機溶剤に溶かした溶液と超純水などの液-液抽出を行う前に濾過プロセスを組み込むことを検討しており、そのための配管系統やフィルター類の整備を行った。 引き続き放射性不純物量測定を継続し最適な純化方法の確立を目指す。
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