研究課題
本年度は原子核乾板中の電子飛跡の再構成手法に大きな進展があった。原子核乾板検出器は、大質量の実現(もしくは調査対象の標的物質)および荷電粒子の運動量測定という目的で原子核乾板と標的物質との積層構造となっているため、隣合う原子核乾板間には数mm程度のギャップができる。現在我々が対象としているSub-Multi GeV領域の低エネルギー電子ニュートリノ反応から放出される電子は、標的物質での多重電磁散乱が大きくなり、原子核乾板間の飛跡接続における接続条件に対する許容値が大きくなる。その結果、近くを通過する他の荷電粒子との誤接続が増える。また、制動放射に伴う電子対生成が起こった場合には、近くに同じような角度の飛跡が出現するため、同様に誤接続が増えてしまう。従来の解析では、誤接続による再構成失敗を避けるために、接続許容値内の全ての飛跡の組み合わせを接続する手法をとっていたため、低エネルギー電子の場合は、接続組み合わせ数が膨大になり、問題になっていた。これを解決するために、グラフ理論に基づいた新たな再構成手法を開発した。この新手法を実際のニュートリノ反応解析に適用し、電磁シャワーが作る膨大な誤接続を解消して正しい接続のみ抽出することに成功した。また、J-PARCニュートリノ・モニター棟でのニュートリノビーム照射実験に向けての検出器準備を進め、10-11月に総標的質量250kgの原子核乾板検出器を設置し、11月下旬から実際にニュートリノビーム照射実験を開始した。ニュートリノビーム照射中の機器運用は大きなトラブルなく進行し、2月末に予定通りビーム照射を完了した。その後、実験で使用した大量の原子核乾板の回収作業・現像作業を完遂し、現在、自動飛跡読み取り装置によるデータ取得を進めている。今後、上記で開発した新解析手法も適用し、電子ニュートリノ反応断面積の測定を進めていく予定である。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Progress of Theoretical and Experimental Physics
巻: 2023 ページ: 033C01
10.1093/ptep/ptad012
http://www.iar.nagoya-u.ac.jp/performance/3171/