ミュー粒子・電子転換過程(μ- + N → e- + N)は素粒子の標準理論では強く抑制されているが、標準理論を超えた様々な新しい物理モデルではその存在が自然であると考えられている。この過程が発見されれば、宇宙・素粒子研究に大きなインパクトを与えることは必須である。 本研究の目的は、世界第一級の大強度陽子加速器 J-PARC の特長を活かした高品質パルス陽子ビームを用いたミュー粒子・電子転換過程の探索研究 (COMET Phase-I) において、宇宙線を起源とする背景事象をさらに徹底的に削減して3E-15の感度到達をより確かなものとすることにある 。これは、先行研究の感度を 100 倍も改善することに相当する。本研究によって、COMET Phase-I の背景事象に対する備えはより一層万全となるため、世界で最初に事象を観測した場合の確からしさが格段に向上する。 本研究では、ミュー粒子・電子転換過程で発生した電子が石英ガラス薄板を通過する時に発生するチェレンコフ光を波長変換ファイバー(WLSF)で外部に取り出し、高い磁場や中性子フラックスが存在しない検出器ソレノイド外に設置する光検出器で検出する装置を新規開発することを目指した。装置開発のために必要なプラスチックシンチレータや光電子増倍管を調達した。 また、飛跡検出器を巡行する電子と逆行する正電荷ミュー粒子のtime-of-flightの差分がおよそ10 nsあることに着目して、この時間差を検出できるトラッキングコードの開発を目指して宇宙線試験データ解析の精密化などに着手した。 本研究事業は、研究代表者が5月18日に特別推進科学研究費補助金に内定したため、同日をもって廃止された。
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