研究課題/領域番号 |
21H01116
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
土屋 晴文 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究副主幹 (70415230)
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研究分担者 |
川田 和正 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (10401291)
和田 有希 大阪大学, 工学研究科, 助教 (40879144)
小井 辰巳 中部大学, 工学部, 准教授 (60831774)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 雷雲 / 雷 / 放射線計測 |
研究実績の概要 |
日本海沿岸に位置する金沢市近郊において、雷や雷雲からの高エネルギー放射線の観測を続けている。R3年度には大学や高校、企業や市民宅など40箇所ほどに装置を設置してきた。R3年度の観測では長い継続時間をもつ雷雲からの放射線事象(以下、ガンマ線グロー)を検出し、現在、解析を進めている。また、これまでの日本海沿岸で得られた観測データから、雷雲の中に複数のガンマ線グローの放射領域がある可能性を示す事象も発見した。加えて、数年分のデータを解析した結果、ガンマ線グローの系統的な特徴も明らかになってきた。たとえば、ガンマ線グローは主に夜間に観測されやすく、典型的な継続時間は1分程度であった。また、ガンマ線グローが発生する気象条件(気温、風速、風向き)に関する特徴もわかり、放射線データと気象学的データをあわせて統計的な解析を可能とする初めての日本海沿岸におけるガンマ線グローのカタログを作成した。こうした成果は、放射線観測のみならず電波観測グループなどと共同で事象の解析を行うことで達成可能となった。 上記の観測のみならず、雷雲中の電場強度と電子加速に関してシミュレーションを実施することで、電場強度が284 kV/m未満と電子なだれを引き起こさない強度でのガンマ線グローやそれを引き起こす電子の振る舞いに関する知見も得られた。 ガンマ線グローに関して観測高度による特徴の違いの検証を実施するため、高山での雷や雷雲からの放射線観測を可能とするシステムの構築を開始した。本年度には、日本海沿岸で使用してきた小型放射線検出器を高山観測に適用できるように変更し、日本にて試験を実施し、大きな問題がないことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下のとおり、当初の計画に沿って進捗しており、おおむね順調に進展している、と判断する。 ・日本海沿岸においては、小型放射線検出器を増設するとともに、新たに中性子検出器や核ガンマ線に特化した検出器を導入するなど、これまでの雷放射線観測ネットワークを拡張・高度化を実施してきた。また、観測ネットワークにより継続的に雷や雷雲からの放射線事象を観測できており、それらを解析を進めている。 ・高山において雷雲からの長時間放射線であるガンマ線グローを検出するため、日本海沿岸で用いてきた従来の小型放射線検出器を高山観測用に改造し、日本において試験を行った。大きな問題もなく動作することを確認でき、今年度以降に国内外の高山に設置する準備を進めている。 ・過去に高山(チベット)で得られた観測データを解析し、日本海沿岸で得られたデータとの比較を行っており、それらをまとめて論文化に向けて取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き日本海沿岸の観測ネットワークを拡張するとともに、高度化していく。とくに、雷の初期段階で発生する強烈な制動放射線を測定可能な検出器を開発していく。 日本海沿岸のみならず、高山において観測も実施できるように測定環境及び装置開発を進めていく。とくに高山において宇宙線観測装置と連携することは、雷や雷雲からの放射線の生成と宇宙線との関係を探る上で重要である。 世界中にある伝統的な宇宙線観測装置である中性子モニタで、雷や雷雲からの放射線に関する検出が報告されている。しかし、中性子やガンマ線、電子及びミュー中間子などに対して、中性子モニタがどのような振る舞いを示すのか詳細に検証された例はほとんどない。そこで本研究において、まずはシミュレーションでその検証を行っていき、観測と比較をしていく。
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