研究課題/領域番号 |
21H01118
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
林 ケヨブ 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (90332113)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | サンプリングカロリメータ / シミュレーション計算 / 角度分解能 |
研究実績の概要 |
本研究では光子が発生する電磁シャワーの詳細を観測し、光子の入射角度を測定する電磁カロリメータを開発する。電磁シャワーの発生は確率論的に行い、全てのシャワー粒子の情報を記録するのは不可能なので、実現可能な検出器の仕様と達成可能な角度分解能間の最適化が必要になる。本研究ではシャワーの模様を読み取る最小単位であるシンチレータストリップの幅が主なパラメータである。シミュレーション計算で、幅を変えながらカロリメータから求められる角度分解能を分析することで、100MeVー2GeVのエネルギーを持つ光子に最適化されたカロリメータのデザインを行った。 GEANT4を用いて、カロリメータの中でシャワーの生成させ、各シンチレータストリップに残されたエネルギーを記録する。得られたエネグギー分布から、機械学習を用いて入射角度を求める。機械学習には最も早くて正確に答えを見つけられると最近注目を集めているXGboostシステムを使用した。 1mmの鉛板と5mmのプラスチックシンチレータを交互に積層する検出器を基本案とし、検出器面に垂直から50度までの角度で入射する光子の応答を学習させた。学習結果を用いて、決まった角度を持つ光子の信号を解析して入射角度を求める。求められた入射角度分布は正規分布では記述できず、もっと一般的は正規分布(Generalized Gaussian Distribution)が必要であった。これに伴い、再構成される角度の分布から既存の分解能を同じ意味を持つ変数を新しく定義し、カロリメータの最適化を行った。角度分解能はストリープの幅を細くすると向上されるが、学習に必要なデータの量で制限される。本研究では、幅15mmのストリップを24層積層することで、1度程度の分解能で1GeV 光子の入射角度を測定するカロリメータのデザインができた。シンチレータの信号を読み取る回路の開発も行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究目的は、シミュレーション計算から検出器の最適化を行うことであった。シャワーの情報から求める光子の入射角度測定の精度はサンプリングカロリメータの構成と、機械学習の深度に依存することを明らかにし、次年度に製作する検出器の仕様を確定することができた。角度測定に必要な検出器層に注目し、実現可能な規模のデザインが完成した。研究初期のデザインであった、プラスチックシンチレータと鉛板の組み合わせより、シンチレーションファイバーとタンクステン板の組み合わせでエネルギー分解能の劣化を低減することも可能になった。読み出し回路の量産も次年度に行うことが可能となり、当初計画通りに研究を進める。
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今後の研究の推進方策 |
次年度 (R4) には最適されたデザインを基に、性能評価用検出器を製作を目標とする。多数のシンチレーションファイバーを効率よく準備するためには、ファイバーの切断・先端の研磨・性能管理の一連の作業での研究開発が必要である。均一な厚みを持つタングステン板の製作や品質管理にも注意を払う。 シンチレーションファイバーとタングステン板を交互に積層して、検出器を製作する。120個の層を24個に分け、それぞれの性能を調査する。性能試験が完了した24個のモジュールを組み合わせ、検出器として完成させる。 信号の読み出し回路については、シンチレーション光を検出するMPPCとその信号を即座で増幅する回路の開発とテストを行う。増幅された信号を記録する部分は本年度開発した回路を利用することで、計416チャンネルの読み出しシステムを完成する。
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