研究実績の概要 |
本研究では光子が発生する電磁シャワーの模様から、光子の入射角度測定を可能にする電磁カロリメータを開発する。電磁シャワー発生プロセスの不均一 性、シャワー形状の情報収得限界などがあり、実現可能な検出器の構造での達成可能な角度分解能を確認するのが先決課題である。本研究の最終年度であるR5年度には1mmX1mmの断面を持つシンチレーションファイバーと14mm幅のタングステンストリップを組み合わせ、384個のモジュールを数製した。16モジュールを配列した検出器層を24個重ねて、検出器として完成した。 完成した検出器の性能評価実験を電子光理学研究ーセンター(当時)の用電子ビームを用いて行なった。四つの運動量(200、400、 600、800 MeV/c)のビームに対して、検出器を四つの角度(0、10、20、30度)に回転しながらデーター収得を行なった。それぞれのデータセットには100,000個以上のイベントを集め、統計的に有意義な結果を得ることができると期待している。 陽電子と光子による検出器の応答特性は異なる点と等しい点が共存しているので、陽電子による検出器性能評価には両方についてのシミュレーション計算結果を比較しながら進めなければならない。光子より陽電子の入射角度再構成の性能が乏しくなるのは、(光子とは違って)電磁シャワーの生成点までにも信号を残すからである。この情報が機械学習を妨げるからであり、角度分解能の向上についての研究が必要になっている。 性能評価の観点からは、シミュレーション計算結果とデータから求めた角度分解能を直接比較することが重要である。陽電子ビームや検出器の詳細な応答特性についての分析を行っている中間結果としては、予想より0.5度程度の角度分解能の劣化が見られている。今後のデータ解析ど、その原因が明らかになり、検出器のさらなる改善が期待される。
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