研究課題
6千度の太陽表面(光球)と100万度のコロナをつなぐ磁束管は、光球の運動エネルギーをコロナへ伝える重要な役割を果たしている。しかし、光球以外、つまり、光球とコロナの間に位置する彩層そしてより上空の大気層での磁場観測は圧倒的に不足している。そこで我々は、2019年に実施した観測ロケット実験CLASP2を発展させた観測ロケット実験CLASP2.1により、光球からコロナ直下(彩層最上部)までの磁場の3次元構造を明らかにすることを目的としている。本ロケット実験で用いるCLASP2観測装置は、我々日本の研究機関が米国、フランスと協力して開発を行ったものである。2021年10月米国ホワイトサンズミサイル実験場(WSMR)にて打ち上げ、スキャン観測を行うことで、空間2次元での電離マグネシウム線波長域(280 nm)の偏光スペクトルの取得に成功した。今年度は、得られた観測データの解析に着手した。観測ロケット実験CLASP2.1の理論的解釈を担っているスペインの共同研究者らと協力し、弱磁場近似の手法(Ishikawa et al. 2021)を適用し、活動領域中の彩層上・中・底部の視線方向磁場を導出した。CLASP2.1は、太陽観測衛星ひので、SDO衛星、IRIS衛星との共同観測に成功しており、光球から彩層最上部までの3次元磁場構造と彩層やコロナの高温プラズマの関係を明らかにした。また、スペインチームが開発を進めるインバージョンコードも実用段階に至り、より複雑な視線方向磁場構造の導出にも成功した。これらの解析進捗に関して議論を行うため、カナリア諸島天体物理学研究所にてCLASP2.1国際科学会合を開催した。そして、解析結果はもちろん、それらの成果発信方針や、今後の将来計画などについて広く議論を行った。
2: おおむね順調に進展している
観測データの解析に取り組みほぼ予定通りに進めることができた。また、国際チームとの議論を経て成果のとりまとめを開始できるまでに至った。
研究実績で述べた科学成果をとりまとめ、査読論文や国際会議などで発表し、成果を国内外に周知する。また、CLASP2.1に搭載されているスリットモニター撮像装置での偏光検出についても解析を進め成果にまとめる。
すべて 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件)
The Astrophysical Journal
巻: 945 ページ: 125~125
10.3847/1538-4357/acb64e
巻: 945 ページ: 144~144
10.3847/1538-4357/acb76e