研究課題/領域番号 |
21H01139
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
柘植 雅士 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (60454211)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 水素原子反応 / 分子進化 / 氷星間塵 / 星間分子雲 / PAH |
研究実績の概要 |
星間分子雲は星の誕生する領域であり、そこで起きる化学進化過程(原子や単純な分子から複雑な分子が生成する過程)はその後に誕生する惑星系の始原物質条件を決める重要な過程である。星間分子雲中の10 K程度の極低温条件下では、主に水分子からなる氷で覆われた直径100 nm程度のサイズの氷星間塵が存在し、その表面上での化学反応が分子進化の鍵となるとして、多くの理論的・実験的研究がなされてきた。水素原子は10 Kという極低温の条件でも氷表面上を自由に拡散するため、水素原子が関わる反応(例えば、水素分子生成やメタノール生成)の重要性が認識され、一般的な理論モデルに組み込まれている。吸着確率の低下、及び、氷表面での滞在時間が減少することから、20 Kを超える温度領域では水素原子が関わる表面反応は不活性となると考えられてきた。研究代表者らは~100 K程度の中温域においても、星間塵表面に降着する水素原子は氷内部に侵入・拡散し、氷内部に存在する原子・分子種と反応しうることを見いだした。本研究では、定量的実験を通じて、氷内部の反応がどのような化合物を生成しうるか、その反応経路を明らかにするとともに、水素原子の侵入・拡散の氷の構造依存性を明らかにすることを目的としている。 2022年度には以下の実験結果をThe Astrophysical Journal誌に報告した:芳香族化合物(ベンゼン・ナフタレン)と水分子の混合氷サンプルの作製時の基板温度をコントロールすることで、高ポロシティ及び低ポロシティのサンプルを作製した。それぞれのサンプルに対して水素原子照射実験を行い、反応生成物の収量とサンプルの厚みの相関を調べた。その結果、高ポロシティサンプルでは>50分子層(1分子層~0.3 nm)、低ポロシティサンプルでは~10分子層まで水素原子が侵入することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した実験を計画通り実施できていること、研究成果の国際論文誌での発表が済んでいることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
既存の研究計画に従い研究を進める。2023年度は特に「水素原子氷内部拡散速度の定量的評価」を目指した実験を進める。
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