研究課題
近年、対流圏・下部成層圏内を長期(>1か月)にわたって浮遊可能なスーパープレッシャー(SP)気球の開発が各国で進められており、特に大気重力波の観測に威力を発揮している。大気重力波は、現在の気候モデルの主要な不確定要素の1つであり、その平均的描像だけでなく、振幅や運動量フラックスの確率密度分布を観測することが求められている。SP気球を用いた観測では、大気重力波の広範な周期帯(約5分~十数時間)全域においてそれらの物理量を得ることができる。本研究では、南極昭和基地でのSP気球観測を実施し昭和基地に設置されている大型大気レーダーPANSYの観測と組み合わせ、大気重力波による運動量輸送の3次元的描像を明らかにする。研究代表者らが南極地域観測隊第63次夏隊で2022年1月~2月に実施した3回のSP気球観測とPANSYレーダーによる同時観測データを解析した結果、南極上空下部成層圏で近慣性周期重力波の同じ波束を捉えていたことがわかった。最新の大気再解析ERA5との比較を行ったところ、大気再解析は昭和基地上空では近慣性周期重力波を定性的に表現できていたものの、下流側では背景場の浮力振動数の増大に伴って重力波の鉛直波長が短くなったために表現できなくなっていたことを明らかにした。研究代表者らが南極地域観測隊第65次夏に参加し、2024年1月~2月に改良型スーパープレッシャー気球を昭和基地から2機放球した。飛翔期間はいずれも3日弱にとどまり、目標としていた10日には届かなかったが、63次と同様の近慣性周期重力波を捉えることに成功した。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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