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2022 年度 実績報告書

高頻度3次元雲・降水・雷観測による積乱雲の構造と発達プロセスの概念モデル再構築

研究課題

研究課題/領域番号 21H01162
研究機関国立研究開発法人防災科学技術研究所

研究代表者

大東 忠保  国立研究開発法人防災科学技術研究所, 水・土砂防災研究部門, 主幹研究員 (80464155)

研究分担者 前坂 剛  国立研究開発法人防災科学技術研究所, 水・土砂防災研究部門, 総括主任研究員 (70450260)
出世 ゆかり  国立研究開発法人防災科学技術研究所, 水・土砂防災研究部門, 主任研究員 (80415851)
櫻井 南海子  国立研究開発法人防災科学技術研究所, 水・土砂防災研究部門, 主任研究員 (30435846)
加藤 亮平  国立研究開発法人防災科学技術研究所, 水・土砂防災研究部門, 主任研究員 (70811868)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード積乱雲 / 雲レーダー / 雷 / 雲・降水同化 / ゾンデ / タイムラプスカメラ
研究実績の概要

当該年度は夏季に関東において積乱雲の集中観測を行った。環境場ゾンデ観測については、2022年8月18日から27日の10日間につくば市の防災科学技術研究所で行った。朝8時から夕方17時の間に、時間間隔は最短で1時間、1日最大10回の高頻度放球を行った(23日、24日、25日、27日)。全部で62回の放球を行い、早期に気球が破裂した2回を除く60回で、地面からの加熱の影響が大きい下層5kmを含むデータを取得した。また、うち51回では気象庁館野の高層気象観測点における8月の対流圏海面高度に近い16.5kmよりも高い高度まで観測した。ゾンデ観測と同期させて防災科研のKaバンド雲レーダー、Xバンド降水レーダー、走査型ライダー、タイムラプスカメラ、雷放電経路3次元観測システムLMA等を用いて、雲の内部構造や発達過程に関してもデータを取得した。
1日10回のラジオゾンデ観測を行った8月23日と27日の2日間を比較した。23日は衛星から層状の雲が広がっていたことが確認されたが、27日は日射がより多く対流性の雲が多かった。温度は23日は2km以下、27日は1km以下で午前中増加し成層が不安定化した。それより上空での温度の変化は大きくなかった。1日の中での気温の変化の少なかった高度1.5km以上の気温が27日の方が低く不安定なことが、対流性の雲の多さと一致した。一方で、最下層の露点温度にはあまり変化はない。したがって、最下層の水蒸気の絶対量の変化はないが相対湿度としては温度の上昇に伴う減少がみられた。
加えて、雲の発生初期を観測した過去の雲レーダーデータを同化した数値実験を行い、雨が降る前から局地的大雨を予測することに成功した。その結果をとりまとめ、論文が国際誌に掲載された。また、積雲が積乱雲に選択的に発達する過程の解明に向けて、発達する雲のみを選択的に同化する手法の開発に着手した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

3年間の計画のうち初年度でリモセン機器やタイムラプスカメラを中心とした観測、2年度目はこれに加えて高頻度の環境場ゾンデ観測を計画していた。複数所有している雲レーダーやX帯レーダーの一部で故障があり稼働ができなかったものがあるが、大部分のリモセン機器やタイムラプスカメラを稼働させ、おおむね目的とする積乱雲とその環境場の高頻度観測データを取得するための観測を実施できた。
計画通り順調に観測を実施できた一方で、積乱雲の環境場ゾンデ観測期間における日射が多くなく、積乱雲の発生があまり多くなかった。1年間の観測ではこのような目的とする天候が継続しないということも想定済みである。環境場ゾンデ観測はこれまでほとんど取得されていない1時間おきのデータについて取得する計画であるが、3年度目に計画どおり追加の観測をやや時期を変えて実施することによって、これまでのデータを補完する日射の多い環境場の高頻度観測データの取得を行う計画である。
数値実験については雲レーダーの同化実験が進展し、データを同化するための方法や、同化インパクトについて知見が得られた。国際誌への投稿まで進み、結果が既に掲載されており、成果とその公表について想定していた計画以上に研究が進んでいる。雲レーダーを中心とする観測データについても、特に積乱雲の発生・発達初期に関する解析が一定程度進んでおり、国際誌への投稿を念頭に成果をとりまとめているところである。

今後の研究の推進方策

3年度目となり、最終年度でもある2023年度は、2年度目に行った環境場ゾンデ観測の追加観測を実施する予定である。2022年度の環境場ゾンデ観測は8月の後半に行ったが、日射の強い日との比較データとして意味があるものの、強い日射を伴った事例の数としては少なかった。そのため、2023年度は時期をずらし8月上旬を中心とする時期に環境場ゾンデ観測を実施する予定である。これに合わせてリモセン機器、タイムラプスカメラを用いた観測を実施予定であるが、雲レーダー、X帯降水レーダーなど故障が相次いでいる機器については、これまで得ているデータの解析を中心に行う。
数値実験については、2022年度までに引き続き、雲レーダーデータの最適な同化手法の確立を目指して同化実験を継続する。これまでにわかってきた知見を概念モデル化するために2022年度と2023年度に計画するゾンデ観測データを用いた理想実験を計画する。特に、初期の対流の大きさや、複数の対流が発生する際の対流間の距離等の関係に着目した実験を行う。
主に、積乱雲の発生初期の発達過程を観測データを中心に解析してきた結果について、進めてきた執筆を完了させて国際誌への投稿を計画する。これらの結果と、これまでに得られている成果、数値実験により取り組んでいる結果をとりまとめ、近年の文献の調査も加えて、積乱雲の構造と発達過程についての新しい知見を概念モデルとしてとりまとめる計画である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Prediction of Meso-γ-Scale Local Heavy Rain by Ground-Based Cloud Radar Assimilation with Water Vapor Nudging2022

    • 著者名/発表者名
      Kato Ryohei、Shimizu Shingo、Ohigashi Tadayasu、Maesaka Takeshi、Shimose Ken-ichi、Iwanami Koyuru
    • 雑誌名

      Weather and Forecasting

      巻: 37 ページ: 1553~1566

    • DOI

      10.1175/WAF-D-22-0017.1

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Cloud radar observation of early development stage of summer convective clouds in the Tokyo metropolitan area, Japan2022

    • 著者名/発表者名
      Ohigashi, T, T. Maesaka, S Suzuki, Y. Shusse, N. Sakurai
    • 学会等名
      AOGS2022
    • 国際学会
  • [学会発表] 関東地方で降雹をもたらした降水システムの移動とガストフロント2022

    • 著者名/発表者名
      前坂 剛, 大東忠保, 岩波 越, 鈴木真一, 出世ゆかり, 櫻井南海子
    • 学会等名
      日本気象学会2022年度秋季大会
  • [学会発表] 局地的大雨予測に対する雲レーダー同化手法の高度化に向けて―同化窓の感度実験から得られた知見と課題―2022

    • 著者名/発表者名
      加藤亮平, 清水慎吾, 大東忠保, 前坂 剛, 下瀬健一, 岩波 越
    • 学会等名
      日本気象学会2022年度秋季大会
  • [学会発表] ファーストエコー検出に関する指標の検証 ―Kaバンド雲レーダを用いた定量的アプローチ―2022

    • 著者名/発表者名
      中澤利恵, 篠田太郎, 民田晴也, 久島萌人, 大東忠保, 山口弘誠, 中北英一
    • 学会等名
      令和4年度日本気象学会中部支部研究会

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公開日: 2023-12-25  

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