研究課題/領域番号 |
21H01163
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
三隅 良平 日本大学, 文理学部, 教授 (20414401)
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研究分担者 |
橋本 明弘 気象庁気象研究所, 気象予報研究部, 主任研究官 (20462525)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 降水過程 / 雲物理 / 暖かい雨 |
研究実績の概要 |
東京における「暖かい雨」の実態を解明するため、2019年8月19~20日に東京付近に激しい雨をもたらした暖かい対流雲について、Xバンド偏波レーダ、Kaバンドレーダ、雲粒スペクトロメータ、光学式ディスドロメータを用いてその特徴を記述するとともに、パーセルモデル・シミュレーションにより降水形成過程を調べた。レーダ反射因子と比偏波間位相差が下層ほど増加する傾向にあり、降雨粒子が併合成長しながら落下していることが示唆された。一方レーダ反射因子差は下層ほど減少する傾向があり、エコー頂付近に低濃度の大きな雨滴が存在することが可能性として示された。また降水雲は複数のストリーク状エコーで構成されていた。雲底付近の雲粒数濃度は、平均370 cm-3、最大値606 cm-3で、東京の下層雲の平均値(213 cm-3)より大きかった。パーセルモデル・シミュレーションの結果は、凝結過程を通して高度2 kmより上空では暖かい雨を引き起こすのに十分な量の併合成長可能な雲粒が形成されることが示された。以上の結果から、雲底付近の大雲粒の存在に関係なく、雲粒の凝結成長・併合成長によって暖かい雨が生じていると考えられる。ただしストリーク状エコーを形成するためには併合成長可能な雲粒が集団として形成される必要があり、そのメカニズムは不明である。 東京スカイツリーにおける長期観測で得られた平均的な雲粒粒径分布に基づき、気象庁非静力学モデル(JMA-NHM)の2モーメントスキームでの雲粒粒径分布を修正し、東京における暖かい雨についてシミュレーションを行った。その結果、雲粒粒径分布を修正することによって降水効率が増加し、より現実的な降水が再現されることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、東京スカイツリー高度458mに設置した各観測機器を活用し、雨滴粒径分布、霧雨粒径分布、雲粒粒径分布、雲凝結核の数濃度、エアロゾル粒径分布の連続観測を行い、データを取得することができた。その結果とKaバンドレーダによるRHIスキャンを活用し、東京に暖かい雨をもたらす積乱雲の事例解析を行った。また観測データに基づきJMA-NHMで仮定される雲粒粒径分布を修正し、東京における「暖かい雨」事例に関するシミュレーションを行い、改善効果を確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
東京都心において、シーロメータを用いたエアロゾル粒子の通年観測を実施する。また前年度までに取得された、東京スカイツリーの高度458mにおける雨滴・霧雨・雲粒・エアロゾル粒子の粒径分布、雲凝結核の数濃度、Kaバンドレーダによる距離・高度断面観測データを解析し、結果をとりまとめる。また観測データに基づき最適化された雲解像モデルNHMの精度評価を行い、成果をとりまとめる。
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