研究課題/領域番号 |
21H01170
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
加 三千宣 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 准教授 (70448380)
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研究分担者 |
松岡 數充 地方独立行政法人大阪市博物館機構(大阪市立美術館、大阪市立自然史博物館、大阪市立東洋陶磁美術館、大阪, 大阪市立自然史博物館, 外来研究員 (00047416)
齋藤 文紀 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 教授 (00357071)
坂口 綾 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (00526254)
大森 貴之 東京大学, 総合研究博物館, 特任研究員 (30748900)
土居 秀幸 兵庫県立大学, 情報科学研究科, 准教授 (80608505)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 人新世 / GSSP / 別府湾堆積物 / 放射性核種 / DNA層序 / 渦鞭毛藻 |
研究実績の概要 |
地球温暖化に代表されるように、産業革命以降の人為撹乱による地球環境変化は、長い地球史から見ても、著しく大きな規模の一つである。そうした近年の大規模な地球環境変化の事実から、完新世から人新世(Anthropocene)という新たな地質時代に移行したという人新世仮説が提唱されるようになった。しかし、その根拠となる地層境界の世界標準模式地、いわゆるGSSPはまだ決まっていない。その模式地についてAnthropocene作業部会を中心に候補が検討される中、日本の別府湾海底堆積物が最もふさわしい候補の一つとして現在検討されている。本研究は、別府湾において人新世の始まりを特徴づける人新世キーマーカー層序のデータセットを構築することで、別府湾堆積物が人新世のGSSPに選定されることを目指す。 21年度では、データセットの拡充を試み、ウラン同位体比、ヨウ素同位体比、渦鞭毛藻類・有孔虫を含むパリノモルフ群集、魚鱗14C測定、DNA解析を行ってきた。ウラン同位体比236U/238Uに1953年以降の急激な増加及び1965年のピークが、129I/127Iに1950年代からの上昇トレンドが、魚鱗14Cに1965年の急激な増加及び1973年のピークが認められた。パリノモルフ群集では、1960年代に群集の顕著な変化が認められた。これらは、別府湾堆積物に人新世の始まりを示す確かな地層境界が存在することを示している。DNA解析はまだ進行中で、2022年度で成果が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予定されていた分析がほぼ終了し、パリノモルフ群集解析結果については、すでに公表済みとなったことや、別府湾人新世境界に関する論文二報(SCP及び微化石・地球化学指標に関する論文)が公表されたこと、またGSSPコアを用いた年縞年代の確立、魚鱗の安定同位体比の測定、珪藻群集を用いた気温復元等、GSSPに不可欠な追加データも大幅に拡充できたことから、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
人新世キーマーカーデータセットの拡充が2021年度でおよそ終了したので、今後はそれぞれのデータを国際誌で公表する必要がある。関連する論文が、2022年の11月までに公表される予定である。また、現在進めている過去2000年分のピストンコア試料のDNA解析を行い、DNA層序を今年度中に確立することを目標とする。また、GSSP候補地の審査用論文の執筆を行い、別府湾サイトがGSSPに選定されることを目指す。
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