研究課題
2023年度では、DNA層序を中心に解析を進めてきた。過去2000年分のカタクチイワシの遺伝的多様性の時代的変化を明らかにし、人新世境界での遺伝的多様性の変化の有無を調べた。ハプロタイプ組成は、1350年,1750年,1950年頃にハプロタイプの多様度が低下し、1350年頃にはやや長い温暖期の後の寒冷化によって祖先型の幾つかのハプロタイプが検出されなくなった。1750年頃には、それまで検出されていたおそらく寒冷条件下に強い外洋の太平洋系群に相当するハプロタイプが少し温暖になることで認められなくなる。1950年頃では,瀬戸内海系群の春季発生群に相当するハプロタイプ、沿岸部の太平洋系群のような長年検出されてきたハプロタイプがみられなくなった。人新世に入って、富栄養化・漁獲圧など人為攪乱強度が増した結果、ハプロタイプ組成が変化したかもしれない。人が種の遺伝的多様性を変えたシグナルの一つを見ている可能性がある。残念ながら、別府湾サイトは、GSSPには選ばれなかったが、Anthropocene Working Groupにおいて最得票数でGSSPを補助する標準補助境界模式地に選ばれることになった。一方で、他の候補サイトを圧倒するプロキシデータセットの構築によって、人為痕跡数の急増ポイントを1953年に見出し、これが、明確な人新世-完新世境界であることを示した。これまで、プロキシごとに人為痕跡が地層中に現れる年代が大きく異なり、真の人新世の始まりがいつかを明確に答える術がなかったが、この人為痕跡数の急増に着目したアプローチによって、その始まりの年代を明確に示すことができた。得られた成果は、The Anthropocene Review等の国際誌、INQUAローマ大会や日本地球惑星科学連合等の多数の国内外の学会で発表し、NHKスペシャル等のメディアを通じて多数紹介された。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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http://engan.cmes.ehime-u.ac.jp/engan/kandou/staff/kuwaelab/project-d1.html