研究課題/領域番号 |
21H01181
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
安東 淳一 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 教授 (50291480)
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研究分担者 |
竹下 徹 北海道大学, 理学研究院, 名誉教授 (30216882)
富岡 尚敬 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 主任研究員 (30335418)
Das Kaushik 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 准教授 (40634077)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 断層運動 / 脆性-塑性遷移領域 / マイロナイト岩 / 変形集中 / 石英 / フィロ珪酸塩鉱物 / 変形微細組織 |
研究実績の概要 |
内陸地震は約10 km-15 kmの深さで発生する。この深度は岩石の変形様式が脆性から塑性に遷移する領域に対応する。したがって内陸地震を引き起こす震源域での岩石破壊現象は、地表近傍での脆性破壊現象とは異なり、岩石の流動変形が大きく関与すると考えられる。しかし「なぜ岩石の流動変形が、断層を形成するような脆性変形に発展してゆくのか」とい問いに対して、まだ統一的な見解はない。本研究ではインド北部Uttarakhand州に露出する北アルモラ衝上断層を対象に、採取した岩石の変形微細組織のキャラクタリゼーションを行い、その結果、断層形成には流体によるフィロ珪酸塩鉱物(白雲母、黒雲母)の晶出と、フィロ珪酸塩鉱物の変形現象とそれにともなう変形集中が強く関与していることが以下の結果から理解できつつある。 1)対象地域に露出する岩石は、転位クリープにより塑性変形しマイロナイト化している。2)マイロナイト化の温度は、北アルモラ衝上断層の近傍では550-650 ℃で、断層から離れるほど低下する傾向が認められる。3)フィロ珪酸塩鉱物の含有量は、北アルモラ衝上断層に近づくにしたがって多くなる。また北アルモラ衝上断層に近づくにしたがって、岩体の面構造に(001)面が平行に配列するフィロ珪酸塩鉱物が多くなる。4)フィロ珪酸塩鉱物の量が増えるほど、主要構成鉱物である石英の長軸/短軸比は大きくなる。すなわち北アルモラ衝上断層に近づくほど、石英は扁平化する。5)フィロ珪酸塩鉱物の量が増えるほど、石英粒子の結晶方位選択配向の集中度は低下する。結果4)とあわせて考えると、石英は扁平化(塑性変形)するほど、結晶方位選択配向の集中度は低下する。6)本地域の岩石は、top-to-southのせん断センスで変形を受けているが、北アルモラ衝上断層に近接する南方1 kmの領域内のみtop-to-northのせん断センスを示す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施計画では、まず北アルモラ衝上断層の地質調査を行うことにしていた。しかし、コロナウイルスの影響で渡航が出来なかった。その為、申請者らによって既に採取していた約20個の岩石試料を用いて変形微細組織のキャラクタリゼーションを行うことで、研究計画には大きな支障は生じなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策は、本年度に得られた岩石変形微細組織のキャラクタリゼーションの結果を再取得し、データの信頼性を検証することにある。また、塑性変形したフィロ珪酸塩鉱物の微細組織のキャラクタリゼーションを透過型電子顕微鏡により行い、変形集中後の最終的な断層形成のメカニズムの解明を目指す。更に、本年度の研究の結果、北アルモラ衝上断層に近接する南方1 km領域内で予想される、地震性断層が形成され際に岩石中に残された痕跡(断層岩:シュードタキライト)の発見を行いたいと思っている。
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