研究課題
本研究は氷河性の侵食・風化作用を被った堆積物試料に含まれる陸源物質の化学分析から,気候変動と氷床形成に対するケイ酸塩鉱物の風化強度の時系列変化を捉え,気候の寒冷・温暖サイクルと岩石分解反応の効率の関係性を解明することを目的としている。氷河が形成され,新鮮な岩石が削剥されることで非常に細粒な砕屑物が生産される。細粒鉱物は非常に高い反応性をもち溶解が迅速に進行する。ケイ酸塩岩の化学風化によって生産された溶質が海洋に運搬され,海洋生物の石灰化反応によって炭素が海底に固定されることで効率的な二酸化炭素の除去に寄与することが予想される。堆積物試料は炭酸塩,ケイ酸塩,マンガン酸化物など多様な成分の混合物であるため,これらを化学試薬によって段階的に抽出する必要がある。今年度の成果として,ニュージーランド沖と南大洋の海洋堆積物から,交換性イオン・炭酸カルシウム・ドロマイト・ケイ酸塩の4つの異なる化学画分を抽出し,それぞれの金属濃度から古海洋環境や鉱物の風化強度の情報を抽出した。本試料は過去100万年間と3400万年前の風化強度の履歴を記録しており,氷床の発達に伴う風化物質の供給量と変質鉱物量の変化を伴うため,岩石の溶解反応がより効率的に進んでいたことがわかった。ニュージーランド堆積物は化学風化の気候変動への応答は数万年スケールで進行する氷期-間氷期変動よりも長期的な変動を示しており,数十万年の時間スケールで効率的な地球表層の炭素消費に寄与したと考えられる。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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