本研究では,溶射プロセスをモデル化した溶融パラフィンの滴下実験により,さまざまな滴下条件が残留応力の発達過程に及ぼす影響を個別に抽出した.また,数値解析を援用して,それぞれの滴下条件が液滴の流動・凝固過程と皮膜の変形・破壊機構に与える影響を可視化しながら,優れた皮膜強度を生み出す最適滴下条件を模索した.本研究で考察した凝固皮膜の強度問題は,液滴の衝突と流動を扱う流体力学,凝固と熱移動を扱う熱力学,変形と破壊を扱う材料力学が絡んだ複雑な問題だったが,現象を可視化しやすいパラフィンの滴下実験と数値解析により,この熱/流体/構造連成メカニクスの体系的な理解が得られた.
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