研究課題/領域番号 |
21H01213
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
阪上 隆英 神戸大学, 工学研究科, 教授 (50192589)
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研究分担者 |
久保 司郎 神戸大学, 工学研究科, 客員教授 (20107139)
小川 裕樹 神戸大学, 工学研究科, 助教 (50880788)
塩澤 大輝 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (60379336)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 材料力学・実験力学 / 非破壊評価・状態監視 / 赤外線計測 / 重防食塗装 / 鋼構造物 |
研究実績の概要 |
橋梁,石油タンク,配管等のインフラ構造物の長寿命化ならびにライフサイクルコストの削減には,予防保全の導入が不可欠である.鋼構造物の腐食に対する予防保全での最重要課題は,限られたリソースの下で,鋼構造物の腐食に対する予防保全を実施するため,重防食塗装の劣化を早期に遠隔から非接触・非破壊で,効率的かつ高精度に検知するとともに,劣化進行度を定量的に評価できる非破壊評価法を開発することである.そこで,本研究では,重防食塗装膜が有する赤外光の分光反射・吸収・透過特性に着目し,赤外線カメラを用いた分光画像計測ならびに分光特性に基づくマルチスペクトル逆問題解析に基づき,遠隔から構造物の重防食塗装の早期劣化を定量的に評価できる計測法を開発する.2021年度は,そのためのハードウエアの製作ならびに塗装膜の赤外線計測に関する基礎検討を行った. まず,計測に用いるハードウエアとして,対象物の分光特性を画像化できる赤外分光画像計測装置を近赤外線カメラを基礎に試作した.また,塗膜劣化試験体に対して,太陽光を用いるパッシブ計測および照明光を用いるアクティブ計測により,塗膜劣化部位の検出および塗膜の残存厚さの定量評価を試行した.その際の計測精度の向上を目的として,一定周期で変動する照明の下での近赤外線強度変動データをロックイン計測する,アクティブロックイン計測法を開発した.さらに,アクティブロックイン計測法の有用性を実験室レベルでの試験体を用いた計測,ならびに実鋼橋梁での現場計測を通じて実験的に検証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に行うべき,ハードウエアの製作ならびに塗装膜の赤外線計測に関する基礎検討は当初の予定通り順調に終了しており,2022年度からの実験的検討項目の抽出も完了している.研究遂行上の問題点は見当たらないため,「おおむね順調に進展している」と言える.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度以降の具体的な研究実施計画を以下に示す. ①赤外線分光画像計測装置の完成 試作した近赤外線分光計測装置に走査機能を付加することで,対象物の赤外分光データの2次元分布を可視化できる装置を完成させる. ②パッシブおよびアクティブ分光計測による塗膜劣化検出 太陽光を用いるパッシブ計測および照明光を用いるアクティブ計測により,塗膜劣化部位の検出および塗膜の残存厚さの定量評価を行う.種々の鋼構造物の防食塗装に用いられている,様々な銘柄の塗料に対し赤外分光特性を計測する.残存膜厚の定量計測に最適な波長帯域を決定し,特定帯域透過フィルタを用いた赤外線計測により残存膜厚評価を高精度化する.現場におけるアクティブ計測のために,安全で安定・均質な照明装置を開発する.変動するアクティブ赤外線照明の下で自己相関ロックイン計測法を適用することで,赤外線輝度値変動のみを抽出し,環境による外乱を除去した残存塗装膜厚の定量計測を行う. ③塗膜劣化検出の高度化 可視光で検出が不可能な,塗膜の化学的劣化を分光的に同定する手法を,アクティブロックイン法を基礎に開発する.劣化の兆候が狭い波長域に現れることを想定し,狭帯域フィルタ使用の下でも高精度な計測が可能な,アクティブ計測とロックインデータ処理法を開発する. ④実験室レベルでの塗膜劣化評価・残存膜厚評価試験 上塗層の膜厚を段階的に変化させた試験片を用いて,分光赤外線計測による膜厚評価に関して実験室レベルでの計測を行う.また,化学的劣化に関しては,環境負荷による促進劣化試験サンプルを用いる.
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