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2022 年度 実績報告書

近接押し込み試験による塑性ひずみ場干渉を活用した力学特性評価

研究課題

研究課題/領域番号 21H01220
研究機関国立研究開発法人物質・材料研究機構

研究代表者

渡邊 育夢  国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 主幹研究員 (20535992)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード押し込み試験 / 数値シミュレーション / 逆解析 / 結晶塑性構成モデル / 非線形有限要素解析
研究実績の概要

押し込み試験を用いた新しい力学特性の評価手法を開発している.特に,本研究では,これまで押し込み試験において避けられてきた近接して押し込み試験を行うことで生じる先行試験と後続試験の塑性ひずみ場の干渉作用を数値シミュレーションと数理最適化法を用いることで処理し,塑性特性を抽出する新しい手法を開発している.本年度は構成モデルの拡張と結晶学的な異方性を考慮した結晶塑性構成モデルへの拡張に取り組んだ.
①構成モデルの拡張
押し込み試験から塑性構成モデルの材料定数を逆推定する場合,押し込み荷重―変位関係からだけでは2つの材料定数を含む単純な構成モデルを設定したとしても唯一解を得ることができない.そこで,研究代表者は圧痕周囲の盛り上がりや本研究で開発した近接押し込み試験を用いた推定手法を開発してきた.しかし,この構成モデルでは鉄鋼などの加工硬化率の高い金属材料への適用性が低いため,本年度は新たな実験データの追加なしに,構成モデルの表現性能を改善する手法開発に取り組んだ.2つの材料定数からなる線形硬化則とべき乗硬化則の逆推定における上・下界性を利用して,中間的な応答を得ることができる新たな手法を開発した.この成果を論文出版したところ,Editor's Choiceに選定された.
②結晶構成モデルへの拡張
昨年度,先行して進めた結晶塑性構成モデルの動的有限要素解析ソフトウェアへの実装を基に,押し込み試験へ適用し,実験結果と比較を進めた.純アルミニウムおよび7000系アルミニウム合金を対象として押し込み試験を実施し,数値シミュレーションと比較した.数値シミュレーションにおいてある程度,異方的な変形挙動を再現できることを確認した.また,純アルミニウムについては近接押し込み試験を実施し,次年度本格実施に向けた実験条件の検討を行った.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初計画では本年度において結晶塑性構成モデルを動的有限要素解析ソフトウェアへ実装する予定であったが,昨年度中に先行して実施できたため,本年度では構成モデルの表現性能を改善するための拡張に取り組むことができた.開発手法では,新たな実験データを追加することなく,既存の構成モデルに対して新たな項を追加できる.この拡張は本研究で開発を進めている近接押し込み試験を用いた評価手法を実用展開する上で極めて重要であり,鉄鋼材料やニッケル基超合金などへ適用可能となった.
また,実験に関しては最終年度に実施予定であった結晶粒界を挟んだ近接押し込み試験および透過型電子顕微鏡による転位観察を純アルミニウムに対して先行して実施した.この試行実験は適切な実験条件を検討するために重要であり,本年度で得られた知見を基に最終年度である次年度において本格的に実験および数値シミュレーションとの連携を推進することができる.実験のための試料についてもいくつかのアルミニウム合金およびオーステナイト系ステンレス鋼を候補として調達し,参照のための引張試験の実施準備を進めている.

今後の研究の推進方策

本研究は特に計算手法について先行して開発を進めることができている.最終年度は当初予定していたアルミニウム合金だけでなくオーステナイト系ステンレス鋼についても実験を実施し,数値シミュレーションと連携することで有用な微小力学特性を抽出できることを実証する.特に最終年度は,結晶粒界を挟んだ近接押し込み試験を実施し,その透過型電子顕微鏡による転位状態の観察を実施するため,実験について多大なエフォートを要する予定である.本研究費を用いて研究業務員を雇用して対応する.
これまで対象としてきたマクロスケールと異なり,求められる実験難度が高まるとともに,先進的な評価設備が必要となる.これまで活用してきた押し込み試験装置に実装されている走査型プローブ顕微鏡だけでなく,より精緻に表面情報を評価できる原子間力顕微鏡や局所応力状態を評価できるラマン顕微鏡なども,数値シミュレーションとの連携に活用することを検討する.
また,これまで得られている成果についても学術雑誌および学術講演会で発表する.次年度は国際会議における招待講演を3件予定している.

備考

研究成果を出版した論文がEditor's Choiceに選ばれたため,国内外に対してプレスリリースされた

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Heterogeneous microstructure of duplex multilayer steel structure fabricated by wire and arc additive manufacturing2022

    • 著者名/発表者名
      Watanabe Ikumu、Chen Ta-Te、Taniguchi Sachiko、Kitano Houichi
    • 雑誌名

      Materials Characterization

      巻: 191 ページ: 112159~112159

    • DOI

      10.1016/j.matchar.2022.112159

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Three-dimensional finite element analysis of unintended deformation of polycrystalline billet in micro-extrusion2022

    • 著者名/発表者名
      Watanabe Ikumu、Amaishi Toshiro
    • 雑誌名

      The International Journal of Advanced Manufacturing Technology

      巻: 120 ページ: 817~827

    • DOI

      10.1007/s00170-022-08726-y

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Data-driven estimation of plastic properties in work-hardening model combining power-law and linear hardening using instrumented indentation test2022

    • 著者名/発表者名
      Chen Ta-Te、Watanabe Ikumu
    • 雑誌名

      Science and Technology of Advanced Materials: Methods

      巻: 2 ページ: 416~424

    • DOI

      10.1080/27660400.2022.2129508

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Characterization of Local Mechanical Properties of Alloys using Instrumented Indentation test2023

    • 著者名/発表者名
      LIU, Dayuan, CHEN, Ta-Te, WATANABE, Ikumu
    • 学会等名
      日本鉄鋼協会第185回春季講演大会
  • [学会発表] Data-driven estimation of plastic properties in a work-hardening model combining power-law and linear hardening using instrumented indentation test2023

    • 著者名/発表者名
      CHEN, Ta-Te, WATANABE
    • 学会等名
      日本鉄鋼協会第185回春季講演大会
  • [学会発表] 近接押し込み試験による塑性ひずみ場干渉を活用した力学特性評価2022

    • 著者名/発表者名
      渡邊 育夢
    • 学会等名
      計算力学研究者交流会
    • 招待講演
  • [学会発表] 多結晶金属材のマイクロ押出し加工三次元有限要素解析2022

    • 著者名/発表者名
      渡邊 育夢, 天石 敏郎
    • 学会等名
      第73回塑性加工連合講演会
  • [学会発表] Data-driven estimation of plastic properties in work-hardening model combining power-law and linear hardening using instrumented indentation test2022

    • 著者名/発表者名
      CHEN, Ta-Te, WATANABE, Ikumu
    • 学会等名
      微小領域の力学特性評価とマルチスケールモデリング第4回研究集会
  • [学会発表] Dual Phase鋼ナノインデンテーション部の3次元組織観察2022

    • 著者名/発表者名
      越知 孝介, 松野 崇, 藤田 大樹, 北条 智彦, 渡邊 育夢
    • 学会等名
      日本鉄鋼協会第184回秋季講演大会
  • [学会発表] Data-driven Estimation of Plastic Properties of Alloys with Various Hardening Behaviors Using Neighboring Indentation Test2022

    • 著者名/発表者名
      CHEN, Ta-Te, WATANABE, Ikumu, LIU, Dayuan
    • 学会等名
      15th World Congress on Computational Mechanics
    • 国際学会
  • [学会発表] マイクロ押出し加工における結晶粒サイズの影響の結晶塑性有限要素解析2022

    • 著者名/発表者名
      天石 敏郎, 渡邊 育夢
    • 学会等名
      2022年度塑性加工春季講演会
  • [備考] New data extracted from old for materials database

    • URL

      https://www.asiaresearchnews.com/content/new-data-extracted-old-materials-databases

  • [備考] 高強度材料に適用可能な力学特性の簡易評価手法を開発

    • URL

      https://kyodonewsprwire.jp/release/202211089436

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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