研究課題/領域番号 |
21H01229
|
研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
鈴木 恵友 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (50585156)
|
研究分担者 |
伊藤 高廣 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (10367401)
安永 卓生 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (60251394)
カチョーンルンルアン パナート 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (60404092)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | CMP / 水酸化フラーレン / 難加工材料 / パワー半導体 / 研磨 / SiC |
研究実績の概要 |
近年,半導体素子では画像素子やメモリー,ロジックなどの組み合わせによりアセンブリ後の素子構造自体が複雑化するにつれてプロセス負担が増大しているため,リソグラフィーやドライエッチングに代わる3次元凹凸形成技術の出現が期待されている。本研究ではフラーレン分子の持つ高い反応性や高硬度に着目し、化学的機械的研磨における高効率な材料除去が実現可能な触媒活性型研磨微粒子の実現を目指している。本年度では、コロイダルシリカ微粒子ダイヤモンド微粒子を用いたハイブリッド微粒子でSiC研磨に関する検証を実施した。その結果、コロイダルシリカ単体では材料除去が生じなかったが、水酸化フラーレンを混合することにより材料除去することが確認できた。研磨レートに関しては、本研究室所有の簡易研磨装置による評価結果であるが一般的に適用されている過酸化水素水の場合と比較して、最大で10倍程度の高速研磨が実現可能となった。ここでは5wt%過酸化水素水のみと比較し、水酸化フラーレンを0.05wt%まで加えると研磨レートが16倍程度上昇した。また、ダイヤモンド微粒子をコア粒子として適用した際、研磨レートは減少するが、スクラッチの抑制が実現可能となった。 このほかフラーレンC60についても検証を進めており、フラーレンC60をダイヤモンド上に吸着させ紫外線照射を行なったところ、ダイヤモンド基板に対する材料除去を示唆する結果も得られている。したがって、フラーレンやフラーレン誘導体を光などの外場により反応させることで新規に炭素同素体の出現も期待でき、難加工材に最適な研磨微粒子設計の指針を示すことができる。 また、電界援用については低屈折率透明パッドを用いたインプリントプロセスの開発を行なった。ここでは、樹脂中に電極を埋め込んだ転写プロセスを考案した。次年度では実態顕微鏡を組み合わせることで微粒子の挙動について予定している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は水酸化フラーレンの持つ高い化学反応性に着眼し、SiC基板を中心にコロイダルシリカ微粒子やダイヤモンド微粒子をコア粒子としたバイブリッド微粒子による研磨特性について評価した。その結果、水酸化フラーレンによるSiC基板の材料除去が生じることや、水酸化バイブリッド微粒子による研磨レートの向上や研磨による欠陥抑制することが確認できた。具体的には、コロイダルシリカ単体ではCMPによるSiCの材料除去が生じなかったが、水酸化フラーレンを混合することで過酸化水素水と同等なレベルでの材料除去が生じた。ここでは水酸化フラーレンはコロイダルシリカ微粒子上に吸着している様子が透過型電子顕微鏡により確認されている。さらに、水酸化フラーレンによるハイブリッド微粒子では、過酸化水素水を混合させた場合、研磨レートが飛躍的に向上する。ここでは、水酸化フラーレンや過酸化水素水が高濃度になるにつれ、研磨レートは上昇する。水酸化フラーレンが混合した場合、Si面と比較してC面での研磨レートが高くなっている。これらの結果から、水酸化フラーレン分子がCMPの材料除去メカニズムを考察する際、カーボンによる性質のほかに水酸化フラーレン自体の化学的作用に寄与することが考えられる。一方、コア粒子をダイヤモンド微粒子にした場合、水酸化フラーレンを混合させた場合、ダイヤモンド微粒子単体と比較して研磨レートは減少したが、研磨後に発生するスクラッチが抑制できた。ここでは加工表面欠陥のラマンイメージングによる応力分布評価も実施しており、水酸化フラーレンを混合させることにより研磨後の歪み場が抑制することを確認した。ここでは化学的作用のほかに水酸化フラーレンの高い対称性を持つケージ構造を反映して、ベアリング作用によるものと推測される。そのため、フラーレンの分子構造の特性を活かすことで高効率で良好な表面の両立が期待できる。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度はフラーレンC60を物質変換させることでダイヤモンドより高硬度な物質が存在するかについて検証を進める。具体的には、ダイヤモンド微粒子上に水酸化フラーレンやフラーレンC60を吸着させたあと、紫外線照射により生成された研磨微粒子用いてダイヤモンド基板の研磨を実施する。これまでダイヤモンド微粒子に水酸化フラーレンを混合させることで、ダイヤモンドに対する材料除去を示唆する結果が得られてきたが、本研究では紫外線などによって生成される炭素同素体についてラマン分光や透過型電子顕微鏡を用いて確認する。紫外線照射については、常圧での照射のほかに本予算で導入した高温、高圧セルを用いて新規炭素同素体の探索も行う。さらに生成された研磨微粒子を用いてダイヤモンド基板の材料除去がされるのか検証を進める。ここでは原子間力顕微鏡による表面粗さの差を指標にするともに専用の光干渉による評価装置を改造し膜厚計測も試みる。 ここではダイヤモンド微粒子をコア粒子としたSiC基板についても評価する。ここではダイヤモンドの粒子径や水酸化フラーレンの濃度やpHを最適化することにより研磨レートの高速化のほかに研磨表面に形成されるスクラッチや歪み場を抑制させる。ここでは実態顕微鏡の暗視野像による観察のほか、ラマンイメージングによる応力分布評価を行う。応力分布評価については研究室所有のラマン分光装置に専用ステージを取り付け改造し、ライン上でラマンシフトの変化について多点測定を行うことで歪み場を定量化する手法を確立する。 最後に水酸化フラーレンやフラーレン反応物の効果を検証するため低屈折率透明パッド作製し、研磨中における研磨微粒子の挙動観察を行う。ここでは研磨微粒子が基板表面に吸着もしくは接触する様子など観測する。また、透過型電子顕微鏡により研磨前後の研磨微粒子の変化を確認し、材料除去メカニズムについて考察する。
|