研究課題/領域番号 |
21H01240
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
谷 弘詞 関西大学, システム理工学部, 教授 (40512702)
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研究分担者 |
呂 仁国 関西大学, システム理工学部, 准教授 (90758210)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | トライボロジー / DLC / トライボケミカル反応 / 摩擦発電 / 静電気 / イオン液体 |
研究実績の概要 |
1,摩擦発電出力向上のための帯電フィルム開発 上記目的に対して,(1)PVDFフィルムに1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドまたは1‐ベンジル‐3‐メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの2種類のイオン液体を極微量混合してフィルムを作成して,摩擦発電出力を確認した.その結果,イオン液体を5~20ppm程度添加することで出力が増加することを確認した.その理由を確認するため,比誘電率の変化および本研究で導入した空間電荷分布測定装置を用いてフィルム厚み方向の摩擦による電荷密度変化を確認した.その結果イオン液体を極微量添加することで,比誘電率に大きな変化はないが,電荷密度が飛躍的に増加することが確認された.現時点でイオン液体を5ppm程度添加することで発電機出力は約4倍の値となった. 2,高電界下におけるトライボロジー現象の確認 水素リッチなDLCを帯電フィルムと仮定して,50kV/m~100kV/m程度の高電場下において摩擦試験を行った.摩擦の際の摩擦熱を想定してレーザを用いた200℃の加熱を行いつつ摩擦試験を行った所,DLCがプラス電位になるように電場を印加した時,摩擦によって生成される炭化水素油の量が増加することが明らかとなった.この結果より,摩擦の際にDLCが分解して熱プラズマが発生し,そのプラズマから炭化水素油が生成されると推定された.さらに直流電場を交流電場に変えることで,炭化水素油の代わりにグラフェン・ポリインの複合膜が生成されることがラマン分光,TEM観察で明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では(1)空間電荷量In-situモニタリング装置の開発,(2)ポーラス樹脂・ナノワイヤ複合フィルムの作成,(3)超薄膜イオン液体膜形成方法の検討と帯電量増加の検討を2021年度に行う予定であった.(1)については研究費が申請時から削減されたため,空間電荷量モニタリング装置のみになったが,2021年度に設備を購入し立ち上げた.(2)については,シリコン樹脂に水を添加して電子レンジで加熱することでスポンジ状のポーラスフィルムが作成できることを確認した.また,そのポーラスフィルムで摩擦発電出力が10倍程度増加することを確認した.(3)については,イオン液体をフィルム作成時に樹脂に添加することで発電量が約4倍になることを確認した.さらに,当初2022年度から予定していた高帯電材料のトライボロジー現象確認と摩擦発電機の信頼性設計についても先行してDLC膜を用いて電場の影響を調べた.以上のことから,計画通り概ね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
本年度(2022年度)は,スポンジ状ポーラスフィルムにイオン液体を微量添加したフィルムを試作して,さらなる発電量増加を目指す.シリコン樹脂へ添加する水分量とイオン液体量をパラメータとして試作し,空間電荷密度,発電量をそれぞれ確認して,摩擦帯電フィルムとしての最適プロセスを見出す.また高電界中のトライボロジー現象の解明として,DLCのみならず,ポリエチレンやエポキシなどの樹脂材料まで摩擦材料の種類を広げ,DLCと同じように炭化水素油やグラフェン・ポリイン複合膜の生成が起こるか確認する.
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