研究課題/領域番号 |
21H01241
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山本 悟 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (90192799)
|
研究分担者 |
宮澤 弘法 東北大学, 情報科学研究科, 助教 (20844335)
古澤 卓 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (80637710)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 数値流体力学 / ガスタービン / 数理モデル |
研究実績の概要 |
本年度はまず、大気中のエアロゾルを含む湿り空気の蒸発・凝縮・付着現象を伴うマルチフィジックス熱流動を支配する数理モデルを構築した。性能向上を目的に産業用ガスタービンコンプレッサー(GTC)でGTC入口に液滴を噴霧(吸気冷却)することが知られているが、それに相反して大気中のエアロゾルがGTC翼に付着することで性能が低下する問題が指摘されている。今回構築した数理モデルをこれまで開発してきたGTCの熱流動大規模シミュレーション技術に融合して、産業用GTC内の高湿り空気熱流動をスーパーコンピュータにより大規模数値解析した。さらに液滴噴霧を伴うGTC内部熱熱流動がGTC性能に与える影響を明らかにした。これまでもGTC翼表面の微小粒子付着と湿りとの間に強い相関があることが研究により報告されていたが、逆圧力勾配の強いGTC内部では高温になって湿りが蒸発すると思われてきた経緯があり、湿りの起源について明確な分析はなされてこなかった。今回の研究では、GTC入口から流入した直径1ミクロン以下の微小粒子が、GTC初段動翼の遷音速域で加速されることで非平衡凝縮が発生して粒子周りに液滴が形成され、それが翼に付着する可能性が示された。特に、湿度がゼロの場合と湿度が90%の場合について粒子の付着率を比較したところ、湿度90%の方が57倍付着率が高いことが示された。この結果は大気中の湿度が予想以上にGTC翼へのエアロゾル付着を助長している可能性を示唆している。さらに液滴噴霧の際のGTC入口からの液滴が、微小粒子の翼への付着を促進することも示された。本研究の成果は、Int. J. Heat and Mass Transfer (IF=5.6)に掲載された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
エアロゾルなどの微小粒子を核にした高湿度空気の凝縮と生成された凝縮液滴が固体表面に付着する一連の凝縮・付着メカニズムを支配する数理モデルを構築することが本年度の目的であったが、年度前半でモデル化にめどが立ち、すでに開発しているガスタービンコンプレッサー(GTC)熱流動大規模シミュレーション技術に組み込んだところ、GTC内で発生する凝縮に伴って微小粒子径が大きくなり、粒子が翼に付着しやすくなるという当初予想していた結果が得られた。その研究成果をまとめてInt. J. Heat and Mass Transferに投稿したところ、採択されて掲載に至っていることから、この時点で今年度の目的は達成した。引き続き、次年度計画している部分負荷運転時における条件での計算にも先行して取り組んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、ガスタービンの起動・停止や部分負荷運転時における、凝縮液滴がGTCに与える影響を解明するため、これまで開発した数理モデルを応用する。
|