研究課題/領域番号 |
21H01244
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
花崎 逸雄 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10446734)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ナノペーパー / 秩序形成 / ゾル / ゲル / ゲル化 / ラテラルフローアッセイ / セルロースナノファイバー / 紙ベース分析チップ |
研究実績の概要 |
本研究では,セルロースナノファイバー分散水を乾燥させて作製したナノペーパーを紙ベース分析チップに応用する際に重要となる特性を追究している.このため,ナノペーパー形成過程と,ナノペーパーと水との相互作用,という2系統の視点でセルロースナノファイバー群と水との相互作用に依存した流動現象を追究している.いずれも,実際的な場面では非平衡のプロセスである.2021年度は,その非平衡条件特有の視点を明らかにするための基盤となる,平衡状態におけるセルロースナノファイバー分散水の特性に関して,それを精緻に解析する方法論を実証した成果を学術雑誌論文として出版している.すなわち,セルロースナノファイバー分散水が,その濃度に応じて構造の秩序を有しているかどうかに関する顕微鏡動画データ解析である.ブラウン運動する微粒子をプローブとして粒子追跡(Single Particle Tracking;SPT)で得られた軌跡群のデータから,完成していない部分的な秩序構造を明らかにすることができることを示した.ナノペーパー形成過程に関する顕微鏡動画データ解析においても,ゾルからゲルに変化する途中の段階を必要に応じて詳細に知ることができれば,ナノペーパーの作製技術における設計指針の確立につながってゆく.同じセルロースナノファイバーの素材であっても,その集積化した構造であるナノペーパーの組織は,セルロースナノファイバー分散水の乾燥に伴う秩序構造形成の仕組みに基づいて左右できると考えられる.本年度はそのための下地となる知見も得ることができ,2022年度へ向けて順調な経過となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
出版した成果に加え,秩序構造として完成したナノペーパーと水との相互作用に注目してSingle Particle Tracking(SPT)に基づく顕微鏡動画データ解析を行うことにより,これまで注目されていなかった重要な性質を見出すことができたため.
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今後の研究の推進方策 |
セルロースナノファイバーから作製したナノペーパーは,その透明性が他の紙のような素材と著しく異なる点として既に注目されてきた.また,材料力学特性が異なるという点も従来から注目の対象になってきた.しかし,流体デバイスとして扱う際に従来のラテラルフローアッセイとどのように違うのか,また,デバイスとして確立する以前にナノペーパーと水との相互作用には一般的な紙と異なるいかなる特徴があるのか,その観点から顕微鏡動画データ解析を始めとする手法で明らかにしてゆく.
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