研究課題/領域番号 |
21H01254
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
田部 豊 北海道大学, 工学研究院, 教授 (80374578)
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研究分担者 |
植村 豪 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (70515163)
境田 悟志 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 助教 (40816170)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 熱工学 / 燃料電池 |
研究実績の概要 |
固体高分子形燃料電池内のナノからサブミリスケールまで、触媒層からガス拡散層までの一貫したマルチスケール水・酸素輸送促進を実現する電池構造、運転手法を明らかにすることを目的とし、酸素輸送抵抗の分離手法の確立およびそれぞれのスケールの輸送抵抗低減のための検討を行った。主な成果を以下にまとめる。 1.電池内のマルチスケールの凝縮水がそれぞれ酸素輸送損失に及ぼす影響を分離して評価できる手法を確立した。ここで、凝縮水により増加する酸素輸送抵抗の支配影響因子として、触媒層内では電流密度、触媒層外では電流密度と圧力の積を特定した。 2.ガス拡散層内から流路への凝縮水排出、特にリブ下では、拡散層表面の疎水性の空孔を抜けるための毛管圧が障害となることを明らかにした。これを改善するために、ナフィオンのスプレー塗布により再現性よくガス拡散層表面を親水化する手法を確立した。 3.高温条件下で適切なガス拡散層を用いることで、高出力運転時でも触媒層外の酸素輸送抵抗の増大を抑制できることを明らかにした。一方、ガス拡散層とマイクロポーラス層の界面には凝縮水が滞留してしまうことをクライオセム観察から示し、これにより触媒層内の酸素輸送抵抗が増大してしまうことも明らかにした。さらに、この輸送抵抗増大の抑制には、リブチャネル幅を狭くすることが有効であることを示した。 4.触媒層内の種々の酸素輸送抵抗をモデル化し、構造制御技術を組み合わせることで、酸素輸送抵抗因子の影響を実験的に評価した。白金担持密度が異なると白金表面での輸送抵抗も異なること、アイオノマー/カーボン比により各種抵抗のバランスが変化することを定量的に明らかにした。また、グラフェンを用いた電解質を使用しない、すなわち、酸素の電解質を介した輸送抵抗フリーの革新的な触媒層作製のために、エレクトロスプレー法を導入し作製条件の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的に則した研究実施計画通りに研究を進めることができた。特に、酸素輸送抵抗の分離手法についてはかなりよく確立でき、信頼性を向上させることができた。これにより、次年度からの検討を予定通りに順調に進められると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
計画通りに、ガス拡散層内の凝縮水排出を促進する方策の検討を進め、実際の電池での発電性能の向上までを試みる予定である。また、マイクロポーラス層については細孔径分布の最適化、親水性と疎水性のハイブリッド構造も検討していくことを考えている。触媒層については前年度の結果を踏まえた構造最適化とともに、グラフェンアイオノマーフリー触媒の有効性についても検討していく。
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