研究課題/領域番号 |
21H01256
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
早川 晃弘 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (90709156)
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研究分担者 |
小林 秀昭 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (30170343)
COLSON SOPHIE 東北大学, 流体科学研究所, 特任助教 (60898386)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | レーザー計測 / LITGS / 温度定量計測 / 酸素富化火炎 / 高圧燃焼 |
研究実績の概要 |
アンモニア火炎の詳細理解に向けて,定量計測技術の高度化は不可欠である.そのため令和4年度は,Laser Induced Thermal Grating Spectroscopy (LITGS)を用いて,1.0 MPaにおける酸素富化メタン/酸素/窒素予混合火炎の火炎温度計測を実施し,光学系の構成などが温度計測結果に及ぼす影響について詳細に検討した.実験には,東北大学流体科学研究所の小型高圧燃焼試験設備を用いた.本研究では,特に光学系が計測結果に及ぼす影響について検討を行うために,ポンプビーム間隔を10 mm,7 mmの場合それぞれにおいてLITGSによる温度定量計測を実施した.このように光学系を変更する事によって,計測点に形成される格子間隔をそれぞれ,23 μm,34 μmに変更することができる.
実験では酸素富化率(窒素と酸素のガス中に占める酸素の割合)を0.21(空気)から0.55まで変化させた.その結果,幅広い酸素富化率の条件でLITGS信号を計測する事ができた.また得られた信号の特性をシグナルコントラストの観点から評価した.その結果,格子間隔が34 μmの条件の方がシグナルコントラストの大きく,LITGSにより得られた温度が数値計算によって予測される温度に近い事が明らかとなった.このように,令和4年度は,温度計測精度に及ぼす光学系の影響を明らかにすることができた. また令和5年度で実施する平面よどみバーナーの設計・製作が完了した.
以上のように令和4年度は,アンモニア火炎の詳細計測に向けたレーザー計測の高度化を行うことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は高圧環境下においても火炎の温度定量計測が可能であると期待されるLITGS法の高度化を達成した.これにより,LITGS計測の光学系を構築する際に,信号強度のみならず,計測精度の観点から,ビーム間隔と,それによって定まる計測点の格子間隔が重要である事が明らかになった.これらの成果は,アンモニア火炎の詳細火炎構造解明,温度定量計測のための基礎となるのみならず,ロケット燃焼のような高温・高圧の極限環境における燃焼現象の解明にも資するものである.このことから,レーザー計測に関する研究は当初計画の通り進捗しているものと評価できる.また令和5年度に用いる平面よどみ火炎バーナーも製作した.
このように,令和4年度はアンモニア層流火炎の定量計測に向けた計測技術の高度化を実現する事ができた.令和3年度の成果と合わせて現在の進捗を総合的に評価すると,研究計画が多少前後しているものの,全体としては順調に進捗していると自己評価することができる.
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は,令和4年度に製作した平面よどみバーナーを高圧燃焼試験装置に設置し,燃焼実験を行うことで,高圧環境下におけるアンモニア層流火炎の火炎構造の解明を行う.計測にはLITGS法,PLIF(Planar Laser Induced Fluorescence)法などのレーザー計測手法を用いる.これらのレーザー計測によって得られた結果と,数値計算によって得られる火炎構造とを比較することで,高圧条件におけるアンモニア火炎構造の詳細理解に繋げる.さらに,ノズルバーナー上に定在させたアンモニア層流火炎に対してもPLIF計測を実施する.
また高温・高圧環境下におけるアンモニア乱流燃焼実験を継続して実施する.様々な圧力,レイノルズ数条件においてアンモニア乱流燃焼実験を行い,PLIF等によって火炎の瞬時構造を計測する事で,アンモニア乱流火炎の乱流燃焼速度を明らかにするほか,局所火炎面密度などの乱流燃焼特性を明らかにする.
上記で得られた層流火炎の火炎構造の結果と乱流燃焼実験結果を比較する.これらを通じて,高圧環境下におけるアンモニア乱流火炎の局所構造の理解に繋げる.
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