高圧環境下におけるアンモニア火炎の定量計測に向けて,Laser Induced Thermal Grating Spectroscopy(LITGS)の高度化を中心に研究を実施した.これまでの研究から熱格子形成過程が温度計測結果に影響を及ぼす事や励起化学種の失活過程に影響を及ぼすクエンチングパートナーの影響が重要であることが知られている.特に水分子が計測精度に影響を及ぼす可能性が大きい事が示唆されていた.アンモニア火炎は既燃ガス中の水のモル分率が高いため,計測精度に及ぼす影響を明らかにすることは重要である.そこで本年度は,酸素富化メタン/酸素/窒素火炎の酸素分率を変化させ,既燃ガス中の組成が計測精度に及ぼす影響について検討を行った.実験は雰囲気圧力が0.3 MPから1.0 MPaの条件下において,窒素と酸素の混合気からなる酸化剤中の酸素割合を,空気に対応する0.21から酸素富化条件である0.55まで変化させて,LITGSによる温度計測を実施した.その結果,雰囲気圧力が高くなるにつれて実験によって計測された温度と数値計算によって求めた温度の差が減少した.また雰囲気圧力が0.3 MPaと0.5 MPaの条件において,酸化剤中の酸素割合が0.4以上の条件において実験によって計測された温度と数値計算によって求めた温度の差が大きくなった.これらの条件では混合気中の水モル分率が大きいため,これが計測精度に影響を及ぼしたものと考えられる.また得られたLITGS信号をシグナルコントラストにより評価した.その結果,シグナルコントラストが大きい条件ほど実験によって計測された温度と数値計算によって求めた温度の差が小さい事が明らかとなった.この点は昨年度得られた知見と同様であった.
|