本年度は過去2年間の研究進捗状況が計画通りであったことから,申請書記載通の結晶成長実験と周囲濃度場制御技術の確立を中心に進めてきた.結晶成長実験においては昨年度に創出したアイディアである温度濃度二重拡散対流場を制御するシステムの構築を検討した.年度前半では数値計算を援用した種結晶周り自然対流場の詳細解析を行った.その結果,種結晶の大きさ,つまりは自然対流の強さに関係なく周囲を5領域に分割した温度制御板で覆うことで,温度場および濃度場起因自然対流を概ね抑制でき,種結晶周りに一様濃度場の形成が可能であることが明らかとなった.しかしながら,その温度制御は高精度かつ時間変化が要求され,飽和溶液内での温度制御技術の確立が必須となり,この技術についても検討を行った.併せて,これらの温度制御板は物質透過性を有しなければならないことから,これまでの実験結果を参照しつつ,温度制御性の検討を行ってきた. 物質拡散評価実験では,有孔平板の伝熱面積を確保するため物質が透過できる面積を全面積の5%程度とし,細孔径とその配置を変えた実験を行い,物質移動量の評価を行った.伝熱面が95%に確保できていることから,これまでの数値計算結果は問題なく使用できると判断した.実験では,同じ透過面積においても径と細孔配置により透過量が制御可能であること,および透過量の最大値の見積もりが可能であることを明らかにした.これらの知見は,これまでの数値計算と同傾向を示しており,細孔径と配置が物質透過量を制御せし得るパラメータとなる証左となった.一方で温度制御に関する評価においては,温度制御能を毎分0.01度という高精度に制御できるシステムを開発した. 本研究成果は国際会議にて発表をし,会議のSpecial Issueに推薦され,現在国際雑誌に投稿すべく共同研究者と執筆をしている.また,5件の国際会議において講演を行った.
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