研究課題
本年度は,まずオペランド観察で得られるレーザー顕微鏡画像の機械学習による超解像の高精度化に向けて,代表的なセマンティックセグメンテーションアルゴリズムであるEncoder-decoderネットワークおよびU-netと,敵対的生成ネットワーク(GAN)との比較を行った.同一箇所のレーザー顕微鏡画像と電子顕微鏡画像を用意し,それを教師データとしてネットワークを教育した.その後,教育に用いないデータセットにより,ネットワークを検証した.検証の結果,それぞれのネットワークのPC accuracy,IoU score,BF scoreは,Encoder-decoderは0.936,0.867,0.723,U-netは0.941,0.872,0.714,GANは0.941,0.879,0.695であった.ここで,PC accuracyは各ラベルで正確にラベル付けされたピクセルの割合を表す.IoU scoreは全ての正解ラベルおよび予測ラベルの内正しく分類された割合を示す.BF scoreは,予測境界と真の境界の類似性を示す.三つのネットワークはいずれも高い数値を示しており,いずれのネットワークを用いてもレーザー顕微鏡画像の電子顕微鏡画像並みの超解像が可能であることが分かった.また,ニッケルに鉄あるいは銅等を合金化したパターン電極で分極させると,合金によって電解質基板上の動的な形態変化に違いが観察された.具体的には,銅を合金化した場合にもっともニッケル合金の移動が促進され,鉄を合金化すると移動が抑制されることが明らかになった.
2: おおむね順調に進展している
レーザー顕微鏡画像の電子顕微鏡画像並みの超解像が可能であることが示されたので,今後様々な条件における観察がより定量的に実施可能になる.パターン電極に関しては,電解質基板としてイットリア安定化ジルコニア(YSZ)に加え,ガドリニウムドープセリア(GDC)を評価した.さらには,ニッケルに鉄および銅を合金化してパターン状にスパッタリングすることに成功した.
パターン電極を用いたオペランド観察実験において,ニッケルに鉄あるいは銅等を合金化すると,電解質基板上の動的な形態変化に違いが観察された.これはそれぞれの標準電極電位の違いによるものと考えられ,酸化物電解質基板上の金属の移動についての現象解明につながる知見だと期待される.また,電解質としてイットリア安定化ジルコニア(YSZ)に加え,ガドリニウムドープセリア(GDC)を評価したところ,ニッケル移動現象に対して電解質も大きく影響することが明らかとなった.分極下の電気化学反応において,中間反応物として酸化物やニッケル等の固体原子が関わっていることが示唆される.幾何学的な凹凸の効果との相乗効果について,今後検討を進める予定である.
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J. Power Sources
巻: 529 ページ: 231228
10.1016/j.jpowsour.2022.231228
巻: 516 ページ: 230670
10.1016/j.jpowsour.2021. 230670