研究課題/領域番号 |
21H01265
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
矢吹 智英 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (70734143)
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研究分担者 |
Shen Biao 筑波大学, システム情報系, 助教 (80730811)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 沸騰熱伝達 / 高速度赤外線カメラ / 三相界線 / MEMSセンサ / 熱伝達機構 |
研究実績の概要 |
プール沸騰における熱伝達機構,気泡底部三相界線における熱輸送機構の解明を目的に研究を行っている.高速度赤外線カメラを用いた水の飽和プール沸騰実験では,超撥水材料のインクジェットプリンティングで形成した人工発泡点により発泡点密度を制御した条件で実験データを取得し次に述べる知見を得た.基本的には発泡点密度の増大に伴いミクロ液膜蒸発の総熱輸送への寄与が増加して熱伝達率が増加することがわかった.しかし,過剰に発泡点を付与すると気泡間干渉によりミクロ液膜の形成が阻害されて熱伝達率が低下することも分かった.また,発泡点密度にかかわらず蒸発により促進された対流熱伝達が支配的な伝熱機構であった.また,高熱流束域では,合体気泡底部においてマクロ液膜を観察することに成功した.今後,さらに高い熱流束で実験を行い,マクロ液膜の蒸発による消失と限界熱流束の発生機構との関連を調べるとともに,直接数値計算を通じてマクロ液膜の形成機構を調べる.また,熱輸送データ画像の深層学習により効率的に熱流束パーティショニングを行う手法も開発した.三相界線の研究では,二つの薄膜温度センサを積層した構造を持つ熱流束センサを製作し,2ミクロンの空間分解能でFC-72の沸騰における気泡底部の三相界線で生じる蒸発熱輸送を計測した.結果として三相界線がセンサ上を通過する際に,1MW/m2に迫る高い熱流束が観察された.一方で,計測した三相界線通過時の温度・熱流束から求めた気液界面熱抵抗が,気体分子運動論で計算される熱抵抗を一桁上回る予想以上に大きな値をとる,興味深い結果となった.本年度導入した蛍光顕微鏡によりサブミクロン空間分解能を達成してさらに詳細な計測をすすめていく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人工発泡点を用いることで,発泡点密度に依存した沸騰熱伝達機構を詳細に調べることができた.さらに,マクロ液膜の存在を観察することに成功し,マクロ液膜蒸発と限界熱流束発生機構という新しい研究対象も見つけられた.開発したマイクロ熱流束センサを用いて三相界線における蒸発熱輸送を計測し,予想を上回る気液界面熱抵抗が観察された.さらに空間分解能を高めたより精密な実験の必要性を明確にできた.
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今後の研究の推進方策 |
高熱流束域で実験を行い,マクロ液膜の蒸発と限界熱流束発生機構の関係を明らかにする.また,沸騰の直接数値計算により,マクロ液膜の形成機構を調べる.空間分解能を高めるためにさらに微細化した熱流束センサを製作してこれまでと同様の実験を行うとともに,新たに導入した蛍光塗料を用いたサブミクロン分解能温度計測技術を駆使して,三相界線熱物質輸送機構を詳細に調べる.
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