研究実績の概要 |
本研究は「振動発電素子の長期信頼性改善のためのエレクトレット劣化メカニズム解明」と題し、IoT無線センサ等の自立電源として有力視されているMEMS型環境振動発電の効率と信頼性を高める研究として、①発電機能材料であるシリコン酸化膜由来のエレクトレット(永久電荷膜)の電荷密度が経時変化するメカニズムを分子動力学的手法で解析した。また、②特性劣化を抑制する手段として、エレクトレット材料の表面保護膜による還元性ガス拡散の防止や、エレクトレット膜中へのバリア層挿入によるシリコン基板側からのキャリア侵入抑制などの対策を施し、その効果を検証した。さらに、これらの知見と対策を活用して、③高信頼性エレクトレット振動発電素子を実証した。 特に①に関して、分子動力学に基づく第一原理計算によって、カリウムイオンが脱離したあとのシリコンが5配位構造となり、負の荷電状態をとることを見出した。また、エレクトレット電位が緩和する物理メカニズムとして、水素イオン、炭素不純物、エレクトレット構造内のシリコン結合の挙動に由来する現象を見出した。これらの解析結果に基づき、②の特性劣化を抑制する手段として、プロセス途中段階で素材表面に疎水性処理を施して空気中の水分の影響を排除したり、SiO2膜中のSi-Si結合を追加熱酸化によって抑制する手法、素子を真空封止する手法、炭素フリーのプロセス治具を使用する方法などの対策を適用したところ、結果として③100℃での劣化時間を25,000時間以上に拡大した。
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