研究課題/領域番号 |
21H01280
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
辻 俊明 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (60434031)
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研究分担者 |
本道 伸弘 人間総合科学大学, 保健医療学部, 助教 (10867344)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 模倣学習 / 力検知 / 力制御 / マニピュレーション / 機械学習 |
研究実績の概要 |
一年目である昨年度は、道具を把持する手先に実装可能な小型力覚センサを開発した。そして、そのセンサを使用した技能動作の解析装置を構築した。モーションキャプチャの位置応答と同期して保存することによって道具使用中の力と位置を共に取得するシステムとした。組立てタスクの際には部品に生じる力を検出できるようにする必要があるため、部品を把持するグリッパに力覚センサを埋め込む構成とした。ハンドの振動によって生じる慣性力の誤差がなくなるため、このような構成を採用することで力の計測誤差を従来比10分の1程度まで減らすことが可能になる。それに伴い、これまでの運動解析装置で得られなかった細かい特徴量を検出できるようになった。 併せて力応答と位置応答の相関からロボットの手先の接触状態を認識する手法を開発した。音声処理に利用されるメル周波数ケプストラム係数変換の技術を力覚センサに転用することにより、小さな高周波応答と大きな低周波応答の特徴量を同時に扱うスケーラブルな接触状態の認識を可能にした。クリックなどの細かい力の特徴量が精度高く検出できるようになることを実験的に示したほか、外力計測のための回帰分析にこのアルゴリズムを応用することによって力の計測精度が向上されることを示した。提案法は起歪体のヒステリシスに起因する誤差の影響を受けないため、特に起歪体のヒステリシスよりも小さい力を検出する際に顕著な改善が得られる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
小型力覚センサの開発とロボットハンドへの実装、接触状態の判別技術など、当初予定していた研究をそれぞれ遂行し、新たな知見を得ることができた。また、その内容をまとめた論文がこの1年間で4編のIF付き国際論文誌に掲載されるなど、顕著な成果を挙げるに至っている。そして、その途中の段階で力の特徴量を正確に認識するための信号処理技術や自動的に時系列情報を複数のフェーズに分ける技術のアイデアを得て実装、評価試験を行っている。当初の内容に加えて新たな技術の開発に着手していることから当初の計画以上に進展しているものと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までは小さな力の特徴量を取り出すための力覚センシング技術およびその信号処理技術を中心に開発を進めた。その成果を踏まえ、本年度は実際の運動解析として運用可能なものへと改良する。まず、小型力覚センサの先に道具を固定する機構を開発し、道具を使用しているときの位置と力のプロファイルを記録する運動解析システムへと改造する。そして接触状態の特徴量を抽出し、判別する手法を開発する。接触状態の判別結果に基づき、道具を使用しているときの動作を複数のプリミティブに分節化することが可能になる。分節化技術そのものは先行研究が既にあるが、接触状態の判別結果を取り込むことによってコンタクトリッチタスクのより精緻な構造化が可能になる。そして分節化されたプリミティブの遷移則としてコンタクトリッチタスクを学習することにより、技能運動の構造化・抽象化を試みる。
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