研究実績の概要 |
本年度は、細胞融合に必要な①細菌のプロトプラスト化、②プロトプラストの電気的細胞融合、細菌の嗜好性進化に必要な③繰り返しストレス印加技術の開発に取り組んだ。 ①細菌のプロトプラスト化:乳酸菌(L. lactis)の懸濁液に対して、細胞壁を溶かすリゾチームを10 mg/ml, ムタノリシンを30 ug/mlを加え、1時間で細胞壁を溶かした。乳酸菌の大きさは1.2 umから1.0 umに減少したことから、細胞壁を除去したと判断した。しかし、細胞壁の除去が不十分である可能性は否めず、杆菌である枯草菌に菌種を変え同様の操作を行った。桿状形状が円形に変わったため、細胞壁を十分に除去し、プロトプラスト化できたことを確認した。 ②プロトプラストの電気的細胞融合:Pt対向電極間に4.0 Vpp、40 MHzの交流電圧を印加することで正の誘電泳動が生じ、誘電泳動によりバッファー内のプロトプラストを電極間に捕獲し、プロトプラスト対を形成した。50 kV/cm、パルス幅0.5 ms、周波数20 Hzで電極間に存在したペアのプロトプラストが破裂することを確認した。 ③繰り返しストレス印加技術の開発:指向性進化デバイスにおいて液滴を分割し、チャンバ内に分割液滴を輸送し、チャンバ内で細菌を淘汰した後に入り口に運ぶことが繰り返しに必要とされる。そこで、液滴を高淘汰圧のチャンバ内液滴から順番に入り口に輸送するための技術を開発した。チャンバに接続する流路を一つの空気圧を印加する流路に接続し、それらの幅を淘汰圧が高いほど広くした。これにより、接続流路に圧力を印加する際に液滴に加わる力を変えた。3つのチャンバに接続流路幅500 um, 25 um, 15 umとした上で、空気圧を徐々に増大させたところ、高淘汰圧のチャンバ内液滴から順に1.7 kPa, 2.7kPa, 3.4 kPaで液滴を入り口に輸送できた。
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