本年度は、細胞融合に必要な、①プロトプラストの電気的細胞融合の高効率化、②単一プロトプラストのスリット通過に伴うダメージ評価、③薬剤濃度による一括淘汰に取り組んだ。 ①プロトプラストの電気的細胞融合の高効率化:枯草菌のプロトプラストの電気的細胞融合では、その融合確率の低さが問題であった。この原因は誘電泳動のための交流電圧と細胞融合のためのパルス電圧を切り替える際に生じるタイムラグにより細胞間の接触が解除されていたことがあげられる。そこで、プロトプラスト液に微量のポリエチレングリコールを混合したところ、電圧切り替え時のタイムラグがあるにも関わらず、プロトプラスト間の接触が維持され、細胞融合の確率を56%にまで向上した。 ②プロトプラストのスリット通過に伴うダメージ評価:単一プロトプラストがスリットに捕捉し、圧力を増加させてスリットを通過させたが、それに伴いプロトプラストが死亡している可能性があった。35 kPaの圧力印加により1 um幅のスリットを通過させたのちに、流路内において37℃で17時間インキュベートしたところ、細胞壁が再生し、プロトプラストか細菌として生命活動していることを確認した。 ③薬剤濃度による一括淘汰:昨年度開発した三次元流路を用いた単一液滴の形成技術を複数液滴形成に拡張した。3つの立体流路を個別にバルブ制御することで、20nL級の液滴の体積のばらつきを5%以内に抑制した。さらにこれまで開発した液滴の均一分割と順次移送技術を統合して、繰り返し一括淘汰の工程を色水にて実現した。その上で、細菌懸濁液滴を用いたところ、液滴内に内部准灌流が発生するにもかかわらず細菌の塊が形成され、淘汰サイクルを回すことが困難であった。 ④細胞融合流路と指向性進化流路の接続:親水性勾配を用いて二つの機能チップの間の液滴輸送を試みた。300 nL液滴を親水性勾配に沿って動かすことに成功した。
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