研究課題/領域番号 |
21H01286
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
渡辺 哲陽 金沢大学, フロンティア工学系, 教授 (80363125)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ロボットハンド / マニピュレーション / 摩擦制御 / 表面洗浄 |
研究実績の概要 |
これまで扱いが難しかった(ロボットにとって)未知の表面特性をもつ物体の把持・操りが可能なロボットハンドシステムの実現を目指す.実現のカギは,1)未知なる表面状態を観察・認識し,2)その状態を清浄かつ把持・操りに適した摩擦状態にする界面洗浄・摩擦制御の実現にある.以上を目的に,2021年度では,以下の事案を実施した. 1.ロボットハンドの指先に組み込んだ小型カメラで接触界面を計測し,その計測結果から接触摩擦の大きさを推定する手法を開発した.また,すべりを検出するシステムを構築した. 2.FBG(Fiber Bragg Grating)センサをソフトロボット指の接触面に組み込み,そのひずみの値から接触面の状態を推定する手法を開発した.接触面に対して接戦方向の力を加えるた場合,摩擦が高いとStick Slipが起こる.これをFBGセンサでとらえることで摩擦の大小を認識した.また,FBGセンサを十字に配置することで,Stick Slipが起こる方向を推定するシステムを開発した. 3.次年度の実施項目である指表面の清浄を保つシステムの開発につながるシステムとして,空気の流量の大小に応じて弁を切り換え,流路を分岐するシステムを構築した.合わせてベンチュリ効果を活用して,薄く柔らかくソフトロボット指に搭載可能なスプレー機構を開発した,圧縮空気を流すことで液体を噴出できる. 4.次年度の実施項目である指表面の清浄を保つシステムの開発につながるシステムとして,圧縮空気を流すことで摩擦を低下させ,純水を噴出することで摩擦を増加させる摩擦可変システムを開発した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目標であった,「未知なる表面状態を観察・認識」を実現するシステムが実現できたことと,次年度における目標である「接触界面の状態を清浄かつ把持・操りに適した摩擦状態にする界面洗浄・摩擦制御」に関連するシステム開発により,その目的を達成できる見込みが得られたため.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は,接触界面・摩擦状態をセンシング・認識するシステムの向上とその状態を制御する手法の実現に挑む. 小型カメラ等のセンサによる接触界面・摩擦状態の観察システムを向上させ,制御実施結果が認識できるような認識精度への向上を図る. 1)界面洗浄,2)摩擦増大,3)摩擦低減を主なターゲットとし,目的に応じて適切な滲出する流体の種類と量を提供できるシステムの実現を目指す.界面の洗浄には,エタノールや圧縮空気などの活用を想定している.滲出したエタノールにより,接触界面や摩擦状態がどのように変化するかをセンサで計測・認識し,その結果に基づいてその滲出量を制御するような制御システムの実現を目指す.摩擦を高くする滲出流体として,少量の蒸留水や空気の吸引を検討する.水は表面張力が高いため,その存在により凝着力,つまり摩擦が高くなる.ただし量が多いと潤滑状態となるため,量の制御は重要である.少量であれば揮発しやすいため,乾いた清浄面を最終的に構成するのに適している.吸引は対象表面が清浄で凹凸が小さい場合や界面に液体が存在する場合に有効と考えている. 摩擦を低下させる滲出流体として,界面洗浄と同じエタノールや空気の活用を検討する.
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