研究課題/領域番号 |
21H01293
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
前田 真吾 東京工業大学, 工学院, 教授 (40424808)
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研究分担者 |
細矢 直基 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (40344957)
重宗 宏毅 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (40822466)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | EHD / HASEL / ソフトアクチュエータ / ソフトポンプ |
研究実績の概要 |
近年ソフトアクチュエータは柔軟で軽量なことからウェアラブルデバイスや協働ロボットなどの分野で注目を集めている.本研究では,HASELとEHDに着目した. HASELとは誘電体に絶縁性の液体を用いた静電アクチュエータである.HASELはファブリケーションが容易であり,高出力であるという特徴を有する.しかしながらそのアクチュエータの変形量が小さく,変形後に復元が難しいという課題がある.そこでEHDに着目した.EHDとは,絶縁性の液体に高電圧を印加すると流動が生じる現象である.EHDは流体ポンプとして作動し,電気的に流体の駆動方向を制御できるが,EHDの発生圧力はHASELに比べて大きくない.そこで本研究では,EHDとHASELを組み合わせ,高い変形量と復元力を持つハイパワーソフトアクチュエータを実現させることを目的とした.本年度はEHDとHASELの両方で作動する液体の調査,EHDとHASELの評価,EHD-HASELの製作および実験を行った.理論的にはHASELの液体の比誘電率は低いほど良いということがわかっており,比誘電率が約2程度の溶媒に着目した.EHD-HASELの製作し,その低誘電率溶媒を用いて動作させたところ10mm程変形させることができた.先行研究では,HASELを5つ重ねて7mmなので変形量を向上させることができた.さらに,EHDポンプを用いて,元の形状に戻すことができたため,目的の動作を得ることができたと言える.また,EHDを用いたセンサについても着手することができ,研究の継続発展が期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度は液体の相分離を活用し、共存するEHDとHASELを共存させる方法を模索した。HAELは静電アクチュエータの一種であるため,電極間の誘電溶液内で電流が生じると機能しない.一方でEHDはイオンドラッグを基本とした現象であり、電極間の誘電溶液内で電流が生じるため相反する性質であるように思われる.しかしながら,EHD現象の電流値は印加電圧によって大きく異なるため,僅かに電流が生じる領域であれば,HASELが機能すると考えた.我々は低誘電率の溶媒を探索し,実験においてこの2つの条件をクリアすることに成功した.本年度は,低誘電率溶媒でHASELを誘起しつつEHDを発現させる条件を見出したことはこれまでにない成果である.現在は電極との相性や耐久性などを評価しつつ,パワーなどの評価も行っている.また,EHDポンプを用いたセンサについても原理検証から開発に成功しており,EHDやHASELを使ったデバイスがソフトロボットとして極めて有用であることが分かった.
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今後の研究の推進方策 |
EHD-HASELを動作させることができたが,動作速度が遅く変形させてから元の形状に戻るまで時間がかかってしまう課題があった.その理由は,EHDポンプの流量が低く,液体を排出,流入させるのに時間を要してしまうためである.そこで,EHD-HASELの形状の最適化を行い,動作速度を向上させる.例えば,EHDポンプの櫛型の電極の数を増加させ,そして流路の幅を広げることによって流量を向上させる.また,アクチュエータのボディにはパウチを利用し,パウチの大きさを小さくすることでパウチに流入する液体の量を減少させ,EHDポンプの動作時間を短縮させることなども検討する.次に,EHD-HASELを用いたアプリケーションの設計,製作,評価を行う.EHD-HASELは高い柔軟性,変形量,復元力を持ち合わせたアクチュエータなので様々なデバイスに活かせると考える.アプリケーションを製作することでEHD-HASELが汎用性の高いソフトアクチュエータであることを示す.
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