研究課題/領域番号 |
21H01294
|
研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
坂上 憲光 東海大学, 海洋学部, 教授 (20373102)
|
研究分担者 |
小金澤 鋼一 東海大学, スポーツ医科学研究所, 研究員 (10178246)
和田 隆広 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (30322564)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 水中ロボット / ハプティックシェアードコントロール / 逆最適制御 / 多関節グリッパ / 物体把持 / 目視検査 |
研究実績の概要 |
本研究では,人間(操縦者)と自動化システムが協調して機械システムを制御するHaptic Shared Control(以下,HSCと呼ぶ)と,剛性可変機能をもつ多関節グリッパを水中ロボットに適用し,水中で行われる近接・接触作業の操縦者負担の軽減,効率化や自動化を実現することを目的としている. まず,操縦と力覚提示を実現する小型軽量デバイスを開発し,水中ロボットの自由度操作,力提示可能な操作デバイスを完成させた.現在,この操作デバイスを利用して3次元運動を伴う水中ロボットの物体回収作業にHSCを適用した実験を行うまでに至った. 水中ロボットの近接・接触作業に対するHSCの有効性については,流速下にある水中ロボットの操縦にHSCを導入することで,操縦者はロボットの操縦自体よりも視覚的な識別タスクに集中できること,心理的負荷を評価する尺度として知られるNASA-TLXを用いて操縦者の精神的負荷が軽減されることも明らかにした.客観的な評価として,一部の操縦者では操縦中のジョイスティックの操作量を軽減できること等も確認した.さらに,別のタスクとして不連続な目標物に対する視覚検査タスクに逆最適制御を組み合わせたHSCを新たに導入し,被験者実験からその有効性も明らかにした.最終年度に向けた予備実験としてフィールド試験も実施した.船を利用したフィールド調査では操作時の船酔いも操縦者に悪影響を及ぼすため,この問題についても基礎的検討を行った. グリッパによる水中物体把持の達成は,操縦者による水中ロボット操縦の熟練度に大きく依存しており,通常のシステム構成ではユーザビリティが低い問題がある.そこで,多関節グリッパの関節柔軟性に加え,グリッパ自体が前後方向にスライドする機構を発案し,水中ロボットの操作熟練度や位置制御に依存せずに把持対象へのアプローチ,把持を容易にする機構の設計も行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各研究者がそれぞれの課題に取り組み,全体としてはおおむね順調に進展している.年度初め及び期間中に全体会議を開き,本研究の進捗状況や課題点,これまでの研究成果の情報を共有した.また研究成果発表に向けた打ち合わせも行った.以下に各項目の進捗を示す. (1)開発した操縦デバイスによって,水中ロボットの3次元運動を伴う物体回収タスクに適用している.ジョイスティック各軸にモータ,角度センサを搭載し,HSCのための力提示機能を可能とし,水中ロボットの水槽実験に利用できる段階に至った.現在はフィールド実験に向けた頑強性及びより高精度なロボット制御機能を持つ操縦デバイスとして改良中である. (2)HSCについては,外乱中における水中ロボットのHSCによる操縦支援の有効性検証および逆最適制御を組み合わせた新たなHSCを開発した.被験者実験の結果から操縦者の負担を軽減し,水中ロボットの制御性能を向上する効果が得られた.またフィールド実験の準備として,水中構造物に対する画像処理法の検討,ロボットケーブルを考慮した検査軌道生成の検討,船上での操縦者の船酔いに対する対策,人間と自動化システムのそれぞれの長所に基づく自動化システムの介入・切り替え指標の検討等,発展的な課題にも取り組み始めた.最終年度に掲げたフィールド実験でのHSCの有効性の検証に向けた準備が順調に進んでいる. (3)多関節グリッパでは,内部電装および水中物体把持の効率化を図るハードウェア改良のための設計を実施した.物体把持の達成効率を高めるため,グリッパ自体が前後方向にスライドする機構を発案し,水中ロボットの操作熟練度や制御性能に大きく依存せず把持対象へのアプローチを実現する機構設計を行った.
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度は,前年度の成果を踏まえて最終目標であるフィールド実験での提案手法の有効性の検証を行う.昨年度に得られた結果を踏まえ,実験や成果発表に向けた計画を立てている.現状での具体的な実施内容や問題点,その対応策は次の通りである. 開発した操縦デバイスについては,水中ロボットの接触作業に必要な位置制御の精度をさらに高めるため,水中ロボット及びジョイスティックのダイナミクスを考慮した制御則を検討中である.水槽での水中ロボット操縦の基礎実験の後,フィールドでの操縦試験に利用する.この際,オプティカルフローを利用した水中構造物に対する画像認識も制御系に組み込む予定である. HSCについてはこれまでの成果に基づき,港湾施設検査に適用する予定である.水槽での事前試験を行った後,港湾関連組織と相談しながら岸壁や鋼管,船底等の検査試験を予定している.その他,HSC利用のフィールドでの応用的利用を図るため,水中ロボットケーブルを考慮した検査のための軌道生成技術の開発,人間と自動化システムのそれぞれの長所に基づく自動化システムの介入・切り替え指標の検証,船上での操縦者の船酔いに対する対策技術の検討等を行い,より発展的な実験検証を行う. グリッパによる物体回収作業へのHSCの適用については,ロボット側の制御性能およびグリッパ側の機構的な柔軟性を高めながら昨年に引き続き,水槽での基礎実験および被験者実験を継続して行う.またフィールドでの物体回収試験も実施する予定である.
|